Far away ~いつまでも、君を・・・~

2学期になり、すぐに定期試験、文化祭と学校行事は目白押しで、尚輝も多忙な日々を送っていた。


毎年10月第1週の土日に開催される文化祭は、弓道部の新人戦に重なることが多い。今年も例外ではなく、2日目の日曜日、試合を終えた尚輝が帰校した時には、既に後片付けに入っていた。


とりあえず、担任をしている3年C組の教室を覗くと


「あ、先生、おかえりなさい。」


クラス委員の千夏の言葉に続いて、生徒たちがなぜか拍手と歓声で迎えてくれた。


「みんなお疲れさん。どうだった、最後の文化祭は?」


「もう最高だったよ、なぁみんな!」


「イエ~ィ。」


尚輝の問いに、男子生徒のひとりが答えると、また他の生徒たちは大歓声。


「そうか、ならよかった。じゃ、片付けの方は頼むぞ。」


生徒たちの明るい表情に安心した尚輝がそう言って、教室を離れようとすると


「先生!」


と千夏が追いかけて来た。


「おぅ、文化祭お疲れさん。よかったな、無事終わったみたいで。」


「はい、ありがとうございます。」


尚輝のねぎらいに、嬉しそうに答えた千夏は


「ところで、どうでした、今日の試合?」


前主将として、やはり後輩たちのことが気にかかっていたようだ。


「ああ、男女とも団体戦は無事、予選は通った。まずは順調なスタ-トと言っていいだろう。」


「本当?よかった。」


「みんな、葉山先輩の顔を潰すわけにはいかないって、張り切ってるぞ。」


「それは光栄です。」


そう言って嬉しそうな表情になった千夏は


「じゃ私、後片付けに戻ります。打ち上げ7時からなんで、急がないと。」


と告げる。


「ああ。まぁお前がいるから大丈夫だとは思うが、あんまり羽目外すなよ。」


釘を刺した尚輝に


「はい、お任せ下さい。」


笑顔を残して、千夏は教室に戻って行く。3年生にとっては、事実上最後の学校行事になる文化祭。これ以降、彼女たちは本当に受験に向けて、ラストスパ-トだ。その前の最後の思い出作りに、焼き肉の食べ放題で打ち上げをするという。


(青春だな・・・今日は思いっきり楽しめよ。)


生徒たちにそう心の中で語り掛けると、尚輝は教室を後にした。
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