Far away ~いつまでも、君を・・・~
そして


「たぶんだけど・・・斗真は彩のこと、本当は前から好きだったんじゃないのかな・・・。」


ポツンと、由理佳はそう口にした。


「そ、そんなこと・・・。」


驚いたように首を振る彩。


「どうしたの?そんなに慌てて・・・。」


「そんなこと・・・あるわけないじゃないですか!」


必死に言い募る彩に


「彩がそんな全力で否定することじゃないでしょ?」


由理佳は思わず笑ってしまう。


「そ、それはそうですけど・・・。」


由理佳のツッコミに、彩はハッとしたように、言葉を飲み込む。そんな彩を、由理佳は少し眺めていたが


「彩、今の私が言うと、負け惜しみに聞こえちゃうだろうけど、私は今の斗真をあなたにお勧めしない。」


そんなことを言い出す。


「由理佳さん・・・。」


「前にも言った通り、今の斗真は、私が好きだった、彩が尊敬してた斗真じゃない。だから私は・・・斗真を諦めたんだもん。」


「・・・。」


「でもひょっとしたら、彩なら、斗真を立ち直らせる・・・というか元の斗真に戻してあげられるかもしれないな。」


その言葉に、驚いたように由理佳を見る彩。


「彩、斗真をよろしくね。」


「由理佳さん・・・。」


「ごめん、今の私がこんなこと言うのはずるいよね。忘れて。」


「・・・。」


「さ、歌うぞ。先に歌わせてもらうから、彩も選んで。」


空気を変えるようにそう言った由理佳に


「はい。」


彩は頷いた。


そして翌日の夜、待ちかねたように斗真から電話が来た。


『由理佳とはちゃんと話した。そして、昨日廣瀬もアイツと話したはずだ。その上で、改めて言わせてくれ。俺は廣瀬が好きだ、お前を由理佳の身代わりにするつもりはない。俺は廣瀬が、廣瀬彩という1人の女性が本当に好きなんだ。電話で言うべきことじゃないことはわかってるが、どうしても今日、今伝えたかったんだ。』


訴えるような斗真の言葉を、じっと聞いていた彩は


「ありがとうございます。私でよければ・・・よろしくお願いします。」


そう答えると、スマホを持ったまま、深々と頭を下げた。


迷ったのは事実。だけど


(何かを変えたい、今の自分を変えたい。今の生活に流されてるままじゃ、きっと私の方こそダメになって行く・・・。)


そんな思いが沸々と湧き上がるのを抑えきれなかったのだ。


(斗真先輩に告られて、なんの不足があるの?)


こうして彩は、かつての憧れの人と新たな道を歩み出す決心をしたのだ。
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