Far away ~いつまでも、君を・・・~
「みんな、暑い中、お疲れさん。飲み物持って来たから、飲んでくれ。俺からの・・・と言いたいところだが、俺たちの代のからの差し入れだ。代表して持って来た。」


と言った斗真に


「ありがとうございます!」


と元気よく礼を述べる後輩たち。実は前日も前々日も何人ものOB、OGが訪ねて来た。


(ウチの部は、先輩たちとの交流も盛んなんだな。)


尚輝は改めて、そう感じていた。


「じゃ、少し早いが、昼休憩にしよう。いただいた飲料は、食堂に運んでくれ。」


児玉の指示に、部員たちは動き出す。一緒に食堂に顔を出した斗真を、宿舎のスタッフは覚えていた。いいから一緒に食べていきなよと、勧められて


「マジですか?ここの飯、懐かしいなぁ。じゃ、遠慮なく。」


と嬉しそうにテーブルに着いた斗真は、後輩達たちと一緒にカレ-ライスをパクついた。


「由理佳も一緒に来たいと言っていたが、受験生は真面目に勉強してろって、言っておいた。」


「でも、帰ったら由理佳さんとデ-トなんでしょ?先輩。」


「当たり前じゃねぇか。」


「まぁ、ヌケヌケと。」


などと、2年生たちと賑やかに話している斗真。この間の試合の時もそうだったが、男女問わず、慕われていたんだなと、感心しながら、その光景を眺めていた尚輝は、ふとその輪から、少し離れたようにしている彩に気付いた。


(彩先輩・・・?)


その姿に、尚輝は違和感を感じていた。


そんな彩が、斗真に話し掛けたのは、午後の練習が始まった直後だった。


「先輩、わざわざありがとうございました。」


「ああ。本当は他の連中も来たいって言ってたんだが、都合が合わなくてな。」


「そうなんですか。でも斗真先輩が来て下さって、みんな喜んでました。他にも何人か先輩が激励に来て下さったんですけど、やっぱり一緒にやった先輩が来て下さるのは、格別です。」


「俺も去年の合宿は来られなかったからな。今年はまだお前たちがいるから、どうしても来たかったんだ。」


「そう言えば、由理佳さん、結構むくれてましたよ、去年。」


「今年も置いてきぼりだってむくれてた。」


その答えに、彩は思わず笑ってしまった。
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