Far away ~いつまでも、君を・・・~
それでも、親善試合が終わり、場所を移動して懇親会が始まる頃には、彩はすっかり落ち着きを取り戻した。仲間達や旧知の人たちと談笑し、料理を楽しめるようになっていた。


会の途中には、親善試合の表彰式があり、エ-ス葉山千夏を擁する卒業まもない第82期生チ-ムが、下馬評通り優勝を果たしたことが、会長から報告された。


優勝チ-ムを代表して、挨拶に立った千夏は


「昨年のこの会では、まだ在校生だった立場としては、絶対負けられないと思ってましたから、嬉しいというより正直、ホッとしてます。」


と言ったあと


「それに二階先生に特に厳しくご指導いただいた私たちとしては、74期生チ-ムに勝てたのは、非常に嬉しいです。師匠を超えられて、気分は最高です!」


満面の笑みでそう続けると、会場は爆笑と拍手に包まれた。これを受けて、司会の木下からマイクを向けられた尚輝は


「自分としては超えられたつもりは、毛頭ないんですが、一部の同期の劣化が酷過ぎて・・・残念ながら、僕の力だけではカバ-しきれませんでした。無念です。」


とことさら悔しそうな表情を見せると、チラリと横の鮫島に視線を送った。


「なんだよ、結局俺のせいかよ。」


口を尖らせた鮫島に


「淳、頼むから来年までに10キロ減量して来てくれ。その暁には、必ずリベンジするからな。待ってろよ、葉山。」


「はい、いつでも受けて立ちます。」


こんなやり取りに、また会場が湧き、雰囲気がいよいよ盛り上がって行く中、表彰式は終わり、また思い思いの相手との歓談タイムが再開される。


大志(ひろし)くん、何か月になったんだっけ?」


彩は、今日は遥の実家で留守番の2人の長男の話題を出す。


「3ヶ月。」


「そっか、早いねぇ。随分大きくなったでしょ?」


「生まれた時から比べたらね。とにかくビックリするくらい、おっぱい飲むんで。」


「とにかく夜も昼もお構いなしに、3時間毎だからな。生まれてから1ヶ月は、遥の実家でお世話になってたんで、俺はわかんなかったんだが、2人が帰って来てから、現実を見て、これは大変なことだと思ったよ。こりゃ、息抜きに飲んで帰るなんて、とても言えないって。」


「そうだよねぇ。」


町田の言葉に、彩が深く頷いていると


「それにしても、まさかねぇ・・・。」


という声が耳に入って来た。
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