Far away ~いつまでも、君を・・・~
「ありがとうございます。」


彩は斗真を見つめ返し、そう言って頭を下げた。だが続けて


「斗真さんのお気持ち、率直に嬉しいです。こんなに想っていただいて、こんなにしていただいて・・・でも正直、お話が急すぎます。確かに私が斗真さんと出会ったのは、昨日今日ではありません。でもそれはつまり、私は斗真さんと由理佳さんの歴史をずっと見て来たってことなんです。だから・・・こんな早いプロポ-ズって、正直違和感があります。」


今の心境を訴える。


「由理佳に申し訳ないって言うのか?」


「というより、斗真さんには、由理佳さんとの時間は、そんな簡単に整理がつくものなんですか?」


真剣なまなざしで尋ねて来る彩の顔を、斗真はじっと見ていたが


「そのことについては、お前に告った時、ちゃんと話したつもりだけどな。今日はこれだけは言っとこうか。俺はお前に幸せになって欲しいとずっと祈っていた。本当は自分の手でそうしてあげたかったが、その資格がない以上、祈るしかなかった。だから、その応援になればと、瀬戸を紹介したし、もっと古い話をすれば、二階がお前を追いかけまわしている時も、俺はアイツなら彩を託せると思って、奴を応援してたんだ。そうじゃなきゃ、俺はアイツをお前の周りから、弓道部から追っ払ってただろう。」


「斗真さん・・・。」


その斗真の言葉に、彩は驚いたような表情を浮かべる。


「だが、お前は結局、二階も瀬戸も受け入れず、他の恋人も作らなかった。まるで俺を待っててくれるかのように。そして幸か不幸か・・・と言う言葉は使っちゃいけないかもしれないが、俺についにチャンスが訪れた。それを逃す気は俺には全くない。」


「・・・。」


「そして今、お前は今夜をずっと俺と一緒に過ごすつもりで、ここにいる。少なくとも俺のことを嫌いじゃないんだろう。そんなお前に、自分の正直な気持ちを伝えたかった。」


「斗真さん・・・。」


「だから、その指輪はとりあえず受け取っておいてくれ。もし、お前が納得して、俺の気持ちを受け入れてくれる決心が付く時が来たら、着けて欲しい。逆にどうしてもダメな時は・・・ま、返されるのもキツイから、好きに処分してくればいい。」


そう言って、斗真は微笑んだ。
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