Far away ~いつまでも、君を・・・~
全てを許し合い、愛する人の腕の中で迎えた初めての朝。彩は恥ずかしさに顔を赤らめながら、でも心からの幸せを感じていた。


一緒にという恋人の誘いに、更に顔を赤らめながら、懸命に首を振り


「可愛い。」


という彼の呟きを背に、逃げるようにシャワ-ル-ムに飛び込んだ彩は、昨夜の愛の余韻を流し落とす。やがて準備が整い、部屋を出た2人は、レストランで朝食を済ますと、チェックアウト。


再び車上の人となった彩は、斗真の運転で故郷を目指す。ちょっと遅れたクリスマスナイトを一緒に過ごした後は、そのまま一緒に里帰りというのは、当初からの計画通りだった。


斗真と、心も身体も1つになった彩にとって、故郷への2人きりの数時間は、ただ幸せな時間だった。実家の前に付き、名残を惜しむように斗真と唇を重ね合った彩。


「よいお年を。」


そう言い合って、車を降りた彩は、遠ざかる恋人の車を見えなくなるまで見送る。再会は年明け、でもそれは実はせいぜい2日先に過ぎなかったけど、今の彩にはそれすら待ち遠しかった。


元日を挟んで、2日と3日は一緒に初詣に出掛けた後、それぞれの実家に赴き、お互いを両親に紹介し、結婚を前提に付き合っていることを報告した。


10年以上付き合った女性ではなく、突然現れた自分に斗真の両親が戸惑わないか、彩は不安だったが、実際には暖かく迎え入れられた。そしてそろそろアラサ-と言われる年齢になろうとしているのに、とんと浮いた話が聞こえてこない娘に心配を募らせていた彩の両親の方も、斗真を大歓待で迎え、賑やかな正月になった。


彩の実家を辞した後、また身体を重ねて、愛を確かめ合った2人。翌日は、仕事始めが近付き、一足早く向こうに戻る彩を、斗真は駅まで送った。


「ごめんな。一緒に帰れなくて。久しぶりにこっちの友だちに飲もうって誘われて、断れなくてさ。」


「ううん、大丈夫。それは最初っからわかってたことだし。斗真さんは向こうに帰ったら、いよいよ新たなスタートが待ってるんだから、もう少しこっちで骨休めして来て。」


「一人で大丈夫か?」


「大丈夫だよ、今まではいつも一人だったんだから。それより斗真さんもあんまり飲み過ぎないで、気を付けて帰って来てね。」


「ああ。」


一線を超えたのをきっかけにようやく自分に敬語を使わなくなった恋人の可愛らしい言葉に、思わず相好を崩した斗真は、彩を抱き寄せるとそのまま唇を奪う。その彼の腕の中で


(斗真さん、早く帰って来てね。)


彩は心の中で、甘く囁いていた。
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