Far away ~いつまでも、君を・・・~

練習が終わり、風呂で汗を流し、いよいよ合宿打ち上げを兼ねたバーベキュー。ジャージに着替えて、会場に現れた部員たちは、弓道場での厳かな雰囲気から、素顔の高校生の姿に、戻っていた。


「まだ、明日の午前の練習は残っているが、取り敢えずこれで、合宿もひと区切りということになる。練習漬けの3日間だったが、みんな集中して、よく頑張ってくれた。2年生はもちろん、1年生の成長には、俺も目を見張った。本当によく頑張ってくれた。今夜は保護者会や宿舎のご好意で、食材はたっぷりある。腹いっぱい食べて、合宿の疲れを吹き飛ばしてくれ。みんな、お疲れ!」


児玉の言葉で、お疲れ様会はスタ-ト。


「さぁ食うぞ~。」


「そんながっつかなくても、お肉こんなにあるから大丈夫だし。」


「そうだよ。意地汚いなぁ~。」


そんなことを言いながら、食べ盛りの高校生たちは一斉に、賑やかに、鉄板に食材を乗せ始める。


本当に肉も野菜も、ついでにソフトドリンクもふんだんにある。


「奮発したねぇ今年は、保護者会。」


「OB、OGの先輩からの差し入れも結構あったからね。」


彩もニコニコ顔で、遥とそんなことを話している。


「うまいなぁ~、尚輝、俺は弓道部に入って、本当によかった。」


「単純な奴。」


「主将目当てで入部したお前に言われたくない。」


なんて、1年生のテ-ブルも盛り上がっていたが


(肉は確かにうまいけど、テ-ブルが学年別じゃ、彩先輩に全然話し掛けられない。)


内心、尚輝はブ-たれてはいた。が、結局は食欲に勝てず、肉をひたすらに頬ばって


「ちょっと、あんた少しは自分で焼きなさいよ。私はあんたの給仕じゃないだから。」


と女子に怒られている。


こうして、宴もたけなわになって来た頃


「食事の途中だけど、全員注目。」


と彩が一同に呼び掛けた。


「バーベキュ-が終わったら、肝試し大会になります。今から、そのペアリングと出発順を決めるくじ引きをします。」


「えっ、くじ引きなんですか?」


「本当はこういう時は男女ペアの方が盛り上がるのはわかっているけど、部員は男女同数じゃないし、奇数だから3人ペアも作らざるを得ない。それに誰と周りたいという希望もあるだろうけど、それじゃ収拾つかなくなっちゃう。だから、恨みっこなし、完全くじ引きで決めます。」


彩はそう宣言した。
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