Far away ~いつまでも、君を・・・~
結局、彼らが選んだのは、自分達のホームテリトリ-であるはずの株式市場での資金調達だった。しかしその為には元手がいる。彼らの会社はあくまで、顧客の資産運用のコンサルティングを請け負うのが業務であり、彼ら自身が運用をする、もしくは代行することを目的にしていなかった。会社設立の隠れた目的が、不正取引との縁切りである以上、それは当然だったのだ。
各自の自己資金を投入するだけでは足りずに、資金調達に悩んでいた斗真。そんな時に彩が、資金の提供を申し出てきたのだ。彩を巻き込むつもりなど毛頭なかった斗真は、最初は拒んだが、結局はその申し出を受け入れた。受け入れるしかなかったのだ。
「君の資金提供の申し出は、本郷にとってはコロンブスの卵だったみたいだ。友人、知人にすがる方法に気付いた奴は俺にも声を掛けて来たし、なんと宮田さんにも連絡をとったらしい。」
そう口を挟んだ大地の言葉に
「えっ、由理佳さんにも?」
驚きの表情を浮かべる彩。
「ああ。彼女は当然、けんもほろろに断ったそうだが、俺は独身時代の貯金を百万くらい貸してやろうとして、麻美に気付かれて、大目玉を食った。」
「じゃぁ。私のお節介が、みなさんにまでご迷惑を・・・。」
彩は悄然と肩を落とした。
そうしてかき集めた資金で、一回は手を切った先輩と連絡を取って、再びインサイダ-取引に手を染めようとした斗真たちだったが、それが彼らの命取りになった。既にその先輩には、捜査の手が及んでいて、そんな彼との接触はまさに、警察にしてみれば、飛んで火にいる夏の虫だったのだ。
「絵に描いたような、見事な転落劇だった。恋人のこんな無様な末路を聞かされて、君もさぞ辛かっただろうが、友人として、俺もこいつも辛い、辛過ぎる。君は高校時代から本郷を知ってるんだから、本郷という男が、本来どんなに真っすぐで誠実な男だったか、よくわかってるはずだ。アイツはこんな不正や犯罪行為とはもっとも遠いはずの男だった。それが・・・金というものが持つ魔力の恐ろしさだ。でも、アイツはそんなものに負けないはずの男だった、負けないで欲しかった・・・とにかくそれが悔しい。」
伊藤の話が終わると、拳を握り締めながら、大地が絞り出すような声で言った。その言葉を聞いた彩は
「お願いです。斗真さんに会わせて下さい、会いたいんです。面会は可能ですよね。」
訴えるように伊藤に言った。だが彼は静かに首を振ると
「本郷の身柄は、既に検察庁に送られていますが、もちろん可能です。本郷はあなたに直接会って、謝罪すべきだと僕は思っていますし、そうアイツに言いました。だけどアイツはあなたどころか、ご両親との面会も拒んでいます。『みんなに顔向けできない。もうみんなの知っている本郷斗真は死んだんだ。そうみんなに伝えてくれ。』と言い張って。」
申し訳なさそうに、そう答えた。
「斗真さん・・・。」
「アイツは卑怯だ。君をどこまで傷つければ気が済むんだ。許せない!」
怒りに満ちた口調で叫んだ大地の顔を見て
「大地さん、ありがとう。でも彼がそう言うなら・・・仕方ないよ。」
彩はそう言うと、悲し気に目を伏せた。
各自の自己資金を投入するだけでは足りずに、資金調達に悩んでいた斗真。そんな時に彩が、資金の提供を申し出てきたのだ。彩を巻き込むつもりなど毛頭なかった斗真は、最初は拒んだが、結局はその申し出を受け入れた。受け入れるしかなかったのだ。
「君の資金提供の申し出は、本郷にとってはコロンブスの卵だったみたいだ。友人、知人にすがる方法に気付いた奴は俺にも声を掛けて来たし、なんと宮田さんにも連絡をとったらしい。」
そう口を挟んだ大地の言葉に
「えっ、由理佳さんにも?」
驚きの表情を浮かべる彩。
「ああ。彼女は当然、けんもほろろに断ったそうだが、俺は独身時代の貯金を百万くらい貸してやろうとして、麻美に気付かれて、大目玉を食った。」
「じゃぁ。私のお節介が、みなさんにまでご迷惑を・・・。」
彩は悄然と肩を落とした。
そうしてかき集めた資金で、一回は手を切った先輩と連絡を取って、再びインサイダ-取引に手を染めようとした斗真たちだったが、それが彼らの命取りになった。既にその先輩には、捜査の手が及んでいて、そんな彼との接触はまさに、警察にしてみれば、飛んで火にいる夏の虫だったのだ。
「絵に描いたような、見事な転落劇だった。恋人のこんな無様な末路を聞かされて、君もさぞ辛かっただろうが、友人として、俺もこいつも辛い、辛過ぎる。君は高校時代から本郷を知ってるんだから、本郷という男が、本来どんなに真っすぐで誠実な男だったか、よくわかってるはずだ。アイツはこんな不正や犯罪行為とはもっとも遠いはずの男だった。それが・・・金というものが持つ魔力の恐ろしさだ。でも、アイツはそんなものに負けないはずの男だった、負けないで欲しかった・・・とにかくそれが悔しい。」
伊藤の話が終わると、拳を握り締めながら、大地が絞り出すような声で言った。その言葉を聞いた彩は
「お願いです。斗真さんに会わせて下さい、会いたいんです。面会は可能ですよね。」
訴えるように伊藤に言った。だが彼は静かに首を振ると
「本郷の身柄は、既に検察庁に送られていますが、もちろん可能です。本郷はあなたに直接会って、謝罪すべきだと僕は思っていますし、そうアイツに言いました。だけどアイツはあなたどころか、ご両親との面会も拒んでいます。『みんなに顔向けできない。もうみんなの知っている本郷斗真は死んだんだ。そうみんなに伝えてくれ。』と言い張って。」
申し訳なさそうに、そう答えた。
「斗真さん・・・。」
「アイツは卑怯だ。君をどこまで傷つければ気が済むんだ。許せない!」
怒りに満ちた口調で叫んだ大地の顔を見て
「大地さん、ありがとう。でも彼がそう言うなら・・・仕方ないよ。」
彩はそう言うと、悲し気に目を伏せた。