Far away ~いつまでも、君を・・・~
京香を見送って、尚輝が道場に入ると
「あ、お疲れ様です。」
とこれまた明るい声が聞こえて来る。
「葉山、ご苦労さん。」
今春卒業し、今はOGとして弓道部の指導に来ている葉山千夏だ。彼女は現在、不定期だが、尚輝が会議でどうしても部活から目を離さざるを得ない水曜日を中心に、こうして来校している。
「じゃぁ、一回休憩にしようか。」
部員にそう声を掛け、自らも汗をぬぐったあと、尚輝に近付て来る千夏。
「京香先生は?」
「ああ、今日はもう帰った。なんか、調べ物があるんだと。」
「あらら、振られちゃったんだ。尚輝っち、可哀想。」
「別にあいつと毎日一緒に帰ってるわけじゃねぇし。それに尚輝っちはよせって、何度も言ってるだろう。最近は部員たちまで、ふざけてそう呼んできやがる。」
尚輝は眉を顰めるが
「やだ。だって私もう、ここの生徒じゃないもん。」
そう言ってヘラヘラ笑うと、千夏は離れて行く。なんだよ、それじゃなんで京香のことは今も「京香先生」なんだよと、文句を言いたくなるが、そんなことを真面目に言っても仕方ないので、尚輝はブスッとした表情で黙る。
もっとも休憩が終わり、指導に戻ると一転、優しい中にも厳しく、礼儀正しい千夏になる。そんな彼女を信頼して、尚輝は彼女が来ている時は、なるべく彼女に任せ、口を出さないようにしている。
同じ高校を卒業し、同じ大学に進み、同じ部に所属と、生粋の尚輝の後輩としての道を歩んでいる千夏は、将来は教員になって尚輝と一緒か後釜として、母校颯天高で弓道部の顧問になるとも公言している。
(葉山ならきっといい顧問になる。でも、大学以降も選手を続けて欲しいって気もするよな。)
後輩たちを熱心に指導している千夏を見ながら、尚輝は考えていた。
やがて練習が終わり、生徒たちを送り出した尚輝は、自分も退出しようとしたが、ふと的が目に入った。
(ちょっと射ってみるか。)
毎日のように道場に通っているが、自分で弓を手にする機会は意外と少ない。なぜ、そんなことを思い立ったのかはわからないが、急にそんな気になった。
「あ、お疲れ様です。」
とこれまた明るい声が聞こえて来る。
「葉山、ご苦労さん。」
今春卒業し、今はOGとして弓道部の指導に来ている葉山千夏だ。彼女は現在、不定期だが、尚輝が会議でどうしても部活から目を離さざるを得ない水曜日を中心に、こうして来校している。
「じゃぁ、一回休憩にしようか。」
部員にそう声を掛け、自らも汗をぬぐったあと、尚輝に近付て来る千夏。
「京香先生は?」
「ああ、今日はもう帰った。なんか、調べ物があるんだと。」
「あらら、振られちゃったんだ。尚輝っち、可哀想。」
「別にあいつと毎日一緒に帰ってるわけじゃねぇし。それに尚輝っちはよせって、何度も言ってるだろう。最近は部員たちまで、ふざけてそう呼んできやがる。」
尚輝は眉を顰めるが
「やだ。だって私もう、ここの生徒じゃないもん。」
そう言ってヘラヘラ笑うと、千夏は離れて行く。なんだよ、それじゃなんで京香のことは今も「京香先生」なんだよと、文句を言いたくなるが、そんなことを真面目に言っても仕方ないので、尚輝はブスッとした表情で黙る。
もっとも休憩が終わり、指導に戻ると一転、優しい中にも厳しく、礼儀正しい千夏になる。そんな彼女を信頼して、尚輝は彼女が来ている時は、なるべく彼女に任せ、口を出さないようにしている。
同じ高校を卒業し、同じ大学に進み、同じ部に所属と、生粋の尚輝の後輩としての道を歩んでいる千夏は、将来は教員になって尚輝と一緒か後釜として、母校颯天高で弓道部の顧問になるとも公言している。
(葉山ならきっといい顧問になる。でも、大学以降も選手を続けて欲しいって気もするよな。)
後輩たちを熱心に指導している千夏を見ながら、尚輝は考えていた。
やがて練習が終わり、生徒たちを送り出した尚輝は、自分も退出しようとしたが、ふと的が目に入った。
(ちょっと射ってみるか。)
毎日のように道場に通っているが、自分で弓を手にする機会は意外と少ない。なぜ、そんなことを思い立ったのかはわからないが、急にそんな気になった。