Far away ~いつまでも、君を・・・~

静との再会は、彩に今のままではいけないという思いを、改めて抱かせてくれた。


(よし、やろう。)


そう決心した彩は、失業保険の申請以来、ご無沙汰だったハロ-ワ-クに足を運び、また就職活動には必要と、気分一新に新しいスーツを求めて、買い物にも出た。


(とにかく何か始めないと、動き出さないと。)


そんなこんなで1週間ほどが過ぎた頃、自宅に木下が訪ねて来た。先ごろ木下は結婚、彩は二次会に招待されていたが、今の自分はそういうおめでたい席は、遠慮した方がなどと考えてしまって、断ってしまった。ただ、木下の部活の1年先輩世代の代表として祝電を送り、またご祝儀も贈った。


そのお礼にと、新婚旅行の土産を携えてやって来た後輩を


「忙しいのにわざわざ、悪かったね。」


彩は申し訳なさそうに、玄関先で迎えた。


「何にもないけど、上がってよ。」


「すみません、では失礼します。」


こうして、食卓に通された木下は、しばらく式や新婚旅行のことなどの雑談を彩としていたが、頃合いを見計らって容を改めた。


「実は、今日こうして伺ったのは、お礼もありますが、先輩にお願いがありまして。」


「どうしたの、改まって?」


彩の問いに木下は、自分は結婚を機に、本格的に経営者としての勉強を、父の下ですることになり、その関係で弓道部OB・OG会の役員を辞任することになった。その後任を引き受けてはいただけないかと切り出した。思いもよらなかった申し出に、彩は驚いたが


「まぁ、ご存じの通り、今の私はプー太郎みたいなもんだから、時間的にはいくらでも融通効くんけど・・・。」


と歯切れ悪い答えをする。


「何か?」


「うん、私もさすがにこのままじゃいけないと思って、就職活動始めたんだよね。もちろん、始めたばっかりで、まだなんの具体的な話もないけど。」


「役員と言っても、そんなに時間を取られるわけではありませんから。俺も続けようと思えば続けられなくはないんですけど、でもやっぱり、今までのようにはいかないと思うんで。突然の話で申し訳ないんですが、是非お願いします。」


と言って、頭を下げた。


「でもキノ、私はやっぱり・・・。」


はっきりしない表情でそう言いだした彩に


「またそんな資格がないとか、迷惑かけるとか言い出すんじゃないでしょうね。先輩、もういい加減にそれ止めましょうよ。」


遮るように、やや強い口調で言った木下の顔を、彩はハッとして見る。
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