Far away ~いつまでも、君を・・・~
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卒業式、終業式と時は瞬く間に過ぎて行き、颯天高校は春休みに入った。一部の生徒たちは、部活の為に登校して来ているが、それでも人影が、かなりまばらになった校内で、尚輝たち教職員は、新年度の準備を進めていた。
この日、京香は、朝から教育委員会に所用の為、外出していた。午後からは、新2年生の担任となる6名の教師による、初の学年ミ-ティングが開かれるので、それまでには戻ると尚輝は聞いていた。
だが、ミーティング開始時間になっても、京香は姿を現さない。今年度、1年生を担当したメンバーがそのまま持ち上がるのが通例なのに、別の教師の顔があり、尚輝が内心、首をひねっていると
「では。これより新年度に向けての第一回ミーティングを始めたいと思います。」
学年主任が切り出したから
「えっ、菅野先生は?」
と慌てて尋ねる。そんな尚輝に視線を送った主任は
「二階くんは、なにも聞いてないのか?」
やや意外そうな口調で言うと
「正式発表はこれからですが、菅野先生は絵の勉強の為に、海外留学をなさるということで、今年度いっぱいで、本校を退職されます。後任は、こちらにいらっしゃる立花先生になりますのでよろしくお願いします。」
淡々と事務的に話を続け、そのまま会議は始まった。が、尚輝は当然それどころではなかった。
(なんだよ、それ?)
とにかく訳が分からず、ミーティングの内容など、まるで頭に入って来ない。混乱したまま、時間だけが過ぎて行き、どのくらい経ったか。ようやく主任がミーティングの終了を告げると、挨拶もそこそこに、尚輝は部屋を飛び出した。
職員室に駆け込むと、既に京香の机は、きれいに片付けられていた。思わず目を疑って、呆然と立ち尽くす尚輝に
「さっき、急に菅野先生から挨拶されてビックリしたよ。今日で最後なんだって?何も聞いてなかったからさ。」
と同僚の1人から声を掛けられたが、尚輝は、返す言葉もない。
(今日で最後って、どういうことなんだよ?一体、何を考えてるんだよ、京香!)
次の瞬間
「それで京香は今、どこに?」
職員室では決して使わなかった呼び方を口にしてしまったことにも気付かず、尚輝は尋ねていた。
「一通り、俺達に挨拶して、今は校長室だ。」
その答えを聞いた尚輝は、思わず校長室の扉を睨み付けていた。
この日、京香は、朝から教育委員会に所用の為、外出していた。午後からは、新2年生の担任となる6名の教師による、初の学年ミ-ティングが開かれるので、それまでには戻ると尚輝は聞いていた。
だが、ミーティング開始時間になっても、京香は姿を現さない。今年度、1年生を担当したメンバーがそのまま持ち上がるのが通例なのに、別の教師の顔があり、尚輝が内心、首をひねっていると
「では。これより新年度に向けての第一回ミーティングを始めたいと思います。」
学年主任が切り出したから
「えっ、菅野先生は?」
と慌てて尋ねる。そんな尚輝に視線を送った主任は
「二階くんは、なにも聞いてないのか?」
やや意外そうな口調で言うと
「正式発表はこれからですが、菅野先生は絵の勉強の為に、海外留学をなさるということで、今年度いっぱいで、本校を退職されます。後任は、こちらにいらっしゃる立花先生になりますのでよろしくお願いします。」
淡々と事務的に話を続け、そのまま会議は始まった。が、尚輝は当然それどころではなかった。
(なんだよ、それ?)
とにかく訳が分からず、ミーティングの内容など、まるで頭に入って来ない。混乱したまま、時間だけが過ぎて行き、どのくらい経ったか。ようやく主任がミーティングの終了を告げると、挨拶もそこそこに、尚輝は部屋を飛び出した。
職員室に駆け込むと、既に京香の机は、きれいに片付けられていた。思わず目を疑って、呆然と立ち尽くす尚輝に
「さっき、急に菅野先生から挨拶されてビックリしたよ。今日で最後なんだって?何も聞いてなかったからさ。」
と同僚の1人から声を掛けられたが、尚輝は、返す言葉もない。
(今日で最後って、どういうことなんだよ?一体、何を考えてるんだよ、京香!)
次の瞬間
「それで京香は今、どこに?」
職員室では決して使わなかった呼び方を口にしてしまったことにも気付かず、尚輝は尋ねていた。
「一通り、俺達に挨拶して、今は校長室だ。」
その答えを聞いた尚輝は、思わず校長室の扉を睨み付けていた。