Far away ~いつまでも、君を・・・~
「そしてもう1つ、2年前から悩んでたなんて嘘だよな。」


「えっ?」


「京香。お前、クラス受け持って、あんなに喜んで、あんなに張り切ってたじゃねぇか?」


「それは・・・。」


「本心を隠す為のポーズとでも言いたいのか。そんなことする必要なんか全然ないし、お前が本心から喜んでるかどうかなんて、ちゃんとわかる。」


尚輝の言葉に、京香は顔を上げた。見つめ合う2人、そして次に口を開いたのは、京香の方だった。


「尚輝は耐えられるの?」


「えっ?」


「今回の私の留学、期限決めてないんだよ。大学に行った時と違って、いつ帰って来るかわからないんだよ?私たち、もう今年で28だよ。それでも尚輝は待っててくれるの?」


真っ直ぐ自分を見て、そう尋ねて来た京香に


「ああ。」


尚輝は頷いた。また見つめ合う2人、そして次に口を開いたのは、やっぱり京香だった。


「嘘つき。」


「京香・・・。」


「尚輝の方がよっぽど嘘つきじゃない。」


その京香の言葉に、尚輝は息を呑む。


「そうだよね、6年遠恋だったけどさ。10年付き合ってるんだもん。私だって尚輝のこと、ちゃんとわかってるつもりだよ。」


「いったい・・・何が言いたいんだよ・・・。」


思わず問い掛けた尚輝の目を真っ直ぐ見て


「あなたは結局、彩さんのことを忘れられないでいる。尚輝の心の中に本当にいるのは私じゃない。彩さんなのよ!」


今日初めて、京香が叫ぶように言う。決めつけるような彼女の言葉に一瞬たじろいだ尚輝は


「お前、何言ってるんだよ。そんなわけ・・・。」


慌てて反論しようとするが


「じゃ、なんでプロポーズしてくれなかったの?」


と畳み掛けられて、思わず絶句する。しかしすぐに


「すまん、考えてはいたんだ。だけど、なかなかタイミングがなくて・・・。」


と答えたが


「クリスマスイブ、初詣の時、バレンタイン、ホワイトデー・・・タイミングはいっぱいあったじゃない!」


言い返されて、何も言えなくなる。


「10年も一緒に居てさ、さすがにそろそろって期待してたのに、まさかあの人が帰って来るなんて・・・話聞いた時、冗談じゃないって正直思った。なんで今更、寝た子を起こすようなことしてくれるのって。」


「京香・・・。」
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