Far away ~いつまでも、君を・・・~
そして、斗真の射った矢は、次々と的に吸い込まれるように的中して行く。


「さすが、OBの中では最も現役に近いだけあるな。」


そんな先輩からの冷やかしの言葉に笑顔を返すと、また斗真は表情を引き締める。


「さすがですね、斗真さん。」


少し離れた所で、その様子を見ていた彩が、横の由理佳に思わずそう言うと


「そうだね。」


と答えた由理佳の口調は、少し浮かないものだった。


「由理佳さん・・・どうかしたんですか?」


先ほどから、なぜか沈んだ声音の由理佳に、思わず彩はその表情を伺う。


「今更だけどさ、斗真はなんで弓道を辞めちゃったのかなって。」


「えっ?」


「私は、彼は大学に入っても弓道を続けるとばかり思っていた。だから私は、そんな彼をずっと応援して、支えて行きたいと思ってたんだけど、本当にあっさり辞めてしまって。」


「そうでしたね・・・。」


「何でって聞いても、『もう弓道はやり切ったし、飽きた。大学に入ったら、世界も広がるし、もっといろんなことを経験したい。』って言うだけで。『俺、本当は弓道、そんなに好きじゃねぇし。』とも言ってたけど、ああやって弓を引いてる姿を見ると、とてもそうは思えないんだよね。」


由理佳の言葉に


「そうですよね。確かに由理佳さんの引退試合だったからでしょうけど、インハイ予選の応援に来て下さったし、合宿にもわざわざ顔を出してくれましたからね。」


同意するようにそう言った彩の顔を、由理佳は少し見ていたが、意を決したように


「なんか・・・最近、斗真が遠くに感じられて。」


とポツンとつぶやくように言った。


「由理佳さん・・・。」


驚いたような表情を向ける彩。


「うん・・・別に何かあったわけじゃないんだけど。斗真が地元を離れちゃったから、やっぱり前みたいになかなか会えないし、それに夜とかに連絡がつかないことも出て来て・・・。」


「・・・。」


「生活スタイルもサイクルも大学生と高校生じゃ、やっぱり違うんだろうし、親元を離れて、羽を伸ばしたいっていう気持ちもわかるんだけど、さ。でもやっぱり不安になる。」


そんなことを言う由理佳の視線の先で、斗真はまた見事に的を射抜いていた。
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