Far away ~いつまでも、君を・・・~
⑫
「いらっしゃいませ。ホテルクラウンプラザにようこそ。」
チェックインの為に、目の前のお客に対して、彩は満面の笑みを浮かべると、いつものように恭しく頭を下げる。
「本日は当ホテルをご利用いただき、誠にありがとうございます。どうぞ、ごゆっくりお過ごし下さいませ。」
クラウンプラザのGWは盛況だった。宿泊客のチェックインが多くなる夕方の時間になり、フロントには列が出来ている。彩を含む3人のクラ-クは、今やフル稼働だ。ホテル、観光業界にとっては、まさしく書き入れ時であるGW。慌ただしく時間が過ぎて行く、今の自分の環境が、彩は嬉しく、またやりがいを感じていた。
「いやぁ、凄かったなぁ。」
18時を過ぎ、チェックインの波もようやく一段落し、クロ-クの1人が思わず、そう口走ると
「そうですね。」
彩は笑顔で応じる。
「でも、あの忙しさの中でも廣瀬さん、なんか楽しそうでした。」
他の1人に言われて
「ええ、楽しいというかとにかく嬉しかったんです。」
と答えた彩は、やっぱり笑顔だった。
19時で、この日の勤務を終え、ホテルを出た彩は、心地よい疲労感と充実感に、その足取りも軽い。
(確かに忙しいし、トラブルやクレ-ムだってある。でも1年前のことを考えれば、今、自分がここに居られることが信じられないんだから・・・。)
それが実感だった。
(尚輝のお陰だよね。)
尚輝の尽力がなければ、今の自分はない。それは間違いない。彩は素直に感謝している。
(だけど、その為に彼は大切な人と離れなくてはならなくなってしまった・・・。)
そのことを考えると、途端に彩の心は重くなる。
『今でも尚輝の心の中にいるのは彩さん。私じゃないんです。』
京香からの手紙の中に書かれていた、この言葉を思い出すたびに、彩は切なくなる。そんなわけない、いくらそう言ってあげたくても、京香はもう手の届かない遠くにいる。
彼女となんとかもう1度話そうと、尚輝は尽力しているはずだが、かれこれ彼と最後に話してからひと月あまり。なんの連絡もないところを見ると、状況は好転しているとは思えない。
だが・・・彩に出来ることは何もない。どうなったのと、こちらから問い合わせるのも変な話だ。申し訳ないという思いを抱えながら、日々を過ごして行くことしか出来なかった。
チェックインの為に、目の前のお客に対して、彩は満面の笑みを浮かべると、いつものように恭しく頭を下げる。
「本日は当ホテルをご利用いただき、誠にありがとうございます。どうぞ、ごゆっくりお過ごし下さいませ。」
クラウンプラザのGWは盛況だった。宿泊客のチェックインが多くなる夕方の時間になり、フロントには列が出来ている。彩を含む3人のクラ-クは、今やフル稼働だ。ホテル、観光業界にとっては、まさしく書き入れ時であるGW。慌ただしく時間が過ぎて行く、今の自分の環境が、彩は嬉しく、またやりがいを感じていた。
「いやぁ、凄かったなぁ。」
18時を過ぎ、チェックインの波もようやく一段落し、クロ-クの1人が思わず、そう口走ると
「そうですね。」
彩は笑顔で応じる。
「でも、あの忙しさの中でも廣瀬さん、なんか楽しそうでした。」
他の1人に言われて
「ええ、楽しいというかとにかく嬉しかったんです。」
と答えた彩は、やっぱり笑顔だった。
19時で、この日の勤務を終え、ホテルを出た彩は、心地よい疲労感と充実感に、その足取りも軽い。
(確かに忙しいし、トラブルやクレ-ムだってある。でも1年前のことを考えれば、今、自分がここに居られることが信じられないんだから・・・。)
それが実感だった。
(尚輝のお陰だよね。)
尚輝の尽力がなければ、今の自分はない。それは間違いない。彩は素直に感謝している。
(だけど、その為に彼は大切な人と離れなくてはならなくなってしまった・・・。)
そのことを考えると、途端に彩の心は重くなる。
『今でも尚輝の心の中にいるのは彩さん。私じゃないんです。』
京香からの手紙の中に書かれていた、この言葉を思い出すたびに、彩は切なくなる。そんなわけない、いくらそう言ってあげたくても、京香はもう手の届かない遠くにいる。
彼女となんとかもう1度話そうと、尚輝は尽力しているはずだが、かれこれ彼と最後に話してからひと月あまり。なんの連絡もないところを見ると、状況は好転しているとは思えない。
だが・・・彩に出来ることは何もない。どうなったのと、こちらから問い合わせるのも変な話だ。申し訳ないという思いを抱えながら、日々を過ごして行くことしか出来なかった。