Far away ~いつまでも、君を・・・~
⑬
インタ-ハイ予選当日。部員たちを引率して、会場入りした尚輝に
「二階。」
と声が掛かった。振り返ると
「児玉先生。」
元颯天高弓道部顧問で、尚輝にとっては恩師である児玉光雄だった。
「ご無沙汰してます。」
そう言って一礼した尚輝に
「ああ、元気そうだな。」
「お陰様で。先生は今日は?」
児玉は異動先の高校に弓道部がなく、現在は弓道を離れている。
「うん。弓道教職員協会経由で、大会運営の応援に駆り出された。ここに来るのも久しぶりだ。」
「そうですか。」
「颯天高は頑張ってるみたいだな。情熱的な顧問に加えて、2人の優秀な女性コーチを迎えて、どんどん力を付けていると評判だぞ。」
「ありがとうございます。教え子の葉山千夏が卒業後から、そして廣瀬彩先輩が去年の秋から、週に1回のペースで指導に来てくれてます。」
「そうなんだってな。葉山さんはともかく、廣瀬がまさか弓道部に帰って来てるとはな。話を聞いた時は驚いた。」
「はい。ご縁があって。生徒たちからも非常に信頼の厚いコーチで助かってます。」
「ご縁か。お前の口から、廣瀬と縁がと聞くと、意味深なものを感じるな。」
「先生・・・。」
「ハハハ・・・。それで廣瀬は今日は?」
「仕事です。」
「そうか、久しぶりに会えるかと楽しみにしていたんだが、残念だな。よろしく伝えておいてくれ。」
「はい。」
「じゃ、颯天高の活躍、楽しみにしてるぞ。」
「ありがとうございます。失礼します。」
普段は温和だが、こと弓道に関しては、厳しくそして熱心な顧問だった児玉。彼の当時の姿が、今の尚輝にとって、1つの理想像になっていることは間違いない。そんな恩師との思いがけない再会に、尚輝は心温まるものを感じていた。
やがて部員たちの準備が整い、正装を身に着けた彼らが、尚輝の周りに集まった。
「いよいよだな。」
部員1人1人の顔を見渡しながら、尚輝が口を開いた。
「ここまで来たら、もう俺の言う事は何もない、全員が自分と仲間を信じて、持てる力を100%出す、それだけを考えて行け。」
「はい!」
そして主将を先頭に、会場に向かう選手を見送る尚輝。
(いよいよ始まります。彩先輩、アイツらに力を貸してやって下さい。)
「二階。」
と声が掛かった。振り返ると
「児玉先生。」
元颯天高弓道部顧問で、尚輝にとっては恩師である児玉光雄だった。
「ご無沙汰してます。」
そう言って一礼した尚輝に
「ああ、元気そうだな。」
「お陰様で。先生は今日は?」
児玉は異動先の高校に弓道部がなく、現在は弓道を離れている。
「うん。弓道教職員協会経由で、大会運営の応援に駆り出された。ここに来るのも久しぶりだ。」
「そうですか。」
「颯天高は頑張ってるみたいだな。情熱的な顧問に加えて、2人の優秀な女性コーチを迎えて、どんどん力を付けていると評判だぞ。」
「ありがとうございます。教え子の葉山千夏が卒業後から、そして廣瀬彩先輩が去年の秋から、週に1回のペースで指導に来てくれてます。」
「そうなんだってな。葉山さんはともかく、廣瀬がまさか弓道部に帰って来てるとはな。話を聞いた時は驚いた。」
「はい。ご縁があって。生徒たちからも非常に信頼の厚いコーチで助かってます。」
「ご縁か。お前の口から、廣瀬と縁がと聞くと、意味深なものを感じるな。」
「先生・・・。」
「ハハハ・・・。それで廣瀬は今日は?」
「仕事です。」
「そうか、久しぶりに会えるかと楽しみにしていたんだが、残念だな。よろしく伝えておいてくれ。」
「はい。」
「じゃ、颯天高の活躍、楽しみにしてるぞ。」
「ありがとうございます。失礼します。」
普段は温和だが、こと弓道に関しては、厳しくそして熱心な顧問だった児玉。彼の当時の姿が、今の尚輝にとって、1つの理想像になっていることは間違いない。そんな恩師との思いがけない再会に、尚輝は心温まるものを感じていた。
やがて部員たちの準備が整い、正装を身に着けた彼らが、尚輝の周りに集まった。
「いよいよだな。」
部員1人1人の顔を見渡しながら、尚輝が口を開いた。
「ここまで来たら、もう俺の言う事は何もない、全員が自分と仲間を信じて、持てる力を100%出す、それだけを考えて行け。」
「はい!」
そして主将を先頭に、会場に向かう選手を見送る尚輝。
(いよいよ始まります。彩先輩、アイツらに力を貸してやって下さい。)