Far away ~いつまでも、君を・・・~
試合が始まった、まずは団体戦。初めての男女とも、複数チ-ムをエントリ-したことに、尚輝は緊張はしていたが、その一方で、今年のメンバ-に自信も持っていた。


そして、選手たちは着実に的中を重ね、なんと全チ-ムとも予選を突破、本戦に進んだ。


(やったぞ!)


思わずガッツポーズをして、叫びたくなるの懸命にこらえ、尚輝は選手たちに駆け寄る。


「よくやった、みんな本当によくやった。」


その尚輝の言葉に、選手たちは嬉しそうに頷く。続く個人戦もエントリ-した男女2名ずつの選手がやはり予選を突破。本戦では、個人団体とも上位進出はならなかったが、予選全突破は、創部以来初の快挙だった。


控室で大いに沸き立つ生徒たちを労い、喜びを分かち合った尚輝は、落ち着くと今日、不参の彩と千夏に報告のLINEを送った。自分も試合中の千夏は少し経ったあとに、驚きと祝福のコメントを送って来たが、彩からの反応はなかった。


(仕事中なんだろう。)


そう思った尚輝は、特に気にすることなく、部員たちに帰り支度を指示した。彼らの準備が出来るまで、会場で尚も続く本戦を見学していた尚輝に


「お疲れさん。」


と児玉が声を掛けて来た。


「あっ、先生。お疲れ様でした。」


「見事だったな。」


「ありがとうございます。」


「かつての本郷や廣瀬のような傑出した選手はいなかったが、みんな粒揃いというか、まとまったいいチームだった。二階、よくここまで育て上げたな。」


「ありがとうございます。でも俺一人じゃ、とてもここまでは出来ませんでした。彩先輩と葉山が力を貸してくれて、それに選手たちがよく応えてくれたからだと思います。」


「そうか。いい先輩と教え子に恵まれたな。」


「はい。」


そう言って笑った児玉に、尚輝も笑顔で応える。


「俺にとって、お前と廣瀬は教え子。だから、葉山さんと今回の選手たちは孫弟子のようなものだ。おかげで、ちょっと鼻が高かった。ありがとうな。」


「いえ、そんな・・・。」


久々に会った恩師にそんなことを言われ、尚輝は少々くすぐったい思いになる。


「颯天高で弓道を一緒にやった連中は、優に100人を超える。俺がみんなにどれほどのことを教えられたかはわからんが、それでも活躍している姿を見れば嬉しいし、誇りに思う。」


「ありがとうございます。」


「そして、みんな幸せになって欲しいと思う。お前にも廣瀬にも宮田にも、本郷にも、な・・・。」


「先生・・・。」


「俺にとっては、みんな同じ可愛い教え子だからなぁ。」


そう言って、改めて尚輝の顔を見た児玉。


「二階、これからも颯天高弓道部を頼むぞ・・・。廣瀬と一緒にな。」


その言葉に、ハッと児玉の顔を見る尚輝。


「これは俺の意思じゃどうにもならんが、俺も早くまた弓道部がある高校に異動したい。そして颯天高と、お前たちと思いっきり勝負したいよ。」


一方の児玉はそう言うと、温和な笑顔を浮かべた。
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