Far away ~いつまでも、君を・・・~
試合が終わった後は、場所を近くのホテルに移しての懇親会。


OB・OG会長や児玉顧問の挨拶の後は、出席者達は食事や歓談に入る。昼間の、また現役高校生もいる席なので、アルコールは控え目で、しかしその分料理がいいのが、この会の特徴。


思い出話や、先程の試合の話に花を咲かせる先輩達に混じって、10代の食べ盛りの彩たちは、目を輝かせながら、ビュッフェスタイルの美味しい料理を遠慮なく、口に運んで行く。


「やぁ、この度はお世話になります。」


やがて、今回の幹事がわざわざ彩たちの席に挨拶に来た。


「いえ、こちらこそ、いつもお世話になっております。」


彩が慌てて立ち上がって、挨拶を返すと


「いやいや、君たち現役生が、嫌な顔もせず、我々を迎えてくれるから、こうやって会も盛況に毎年、開くことが出来るんだ。私なんかは、ご覧の通り、君たちから見れば遥かに上のおっさんだが、それでもああやって、母校の弓道場に立てば、なんとも言えない思いになって、少なくても自分では、あの頃の高校生に戻ったような気になれる。だから、本当に1年に1回、我々には大切な機会なんだ。君たちもやがて、卒業して、我々の仲間になる。こういう機会が、君たちの後輩たちにも引き継がれて行くよう、よろしく頼むよ。」


「はい、もちろんです。」


彩がそう答えると、幹事は嬉しそうに頷いて、席を離れて行く。


宴もたけなわとなり、交歓の輪が学年や世代を超えて来る。いよいよ賑やかになって来た会場で、ふと気が付くと、斗真と由理佳がいつの間にか、ピッタリ並んで、先輩達と話している。


「相変わらず仲良しだね、あの2人。」


それを見た遥が、羨ましそうな声を出す。斗真と由理佳の仲は、OB連にも周知のことで、先輩達からの冷やかしやツッコミに、時に笑顔で、時にはにかみながら、答えている。


「どう見てもお似合いのカップルだからなぁ。」


と呟く町田の横で


(ホント、その通り。由理佳さんが心配することなんか、何もないじゃない。)


と彩は思う。そんな彩に近付いて来た尚輝が


「彩先輩、目の毒ですね。」


とコソッと囁くと


「うるさい。」


と肘テツ一撃。


「ウホッ!」


とむせぶ尚輝を尻目に、彩はとっとと、その場を離れた。
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