Far away ~いつまでも、君を・・・~
「そしてこう言われました。『二階、これからも颯天高弓道部を頼むぞ。廣瀬と一緒にな。そしていつの日か、俺と思いっきり勝負しよう』って。」


その言葉を聞いた彩は、ハッとしたように尚輝の顔を見る。


「私と一緒に・・・。」


「はい。」


尚輝は静かに、彩を見つめる。


「先輩、どうですか?」


「えっ?」


「これからもやってくれますか?俺と一緒に。」


「私は自分の仕事に支障のない範囲で、OB・OG会からの協力要員として、コーチをやらせてもらってる立場だから。尚輝の迷惑にならなければ喜んで。」


答える彩。その顔をじっと見つめていた尚輝は、やがて意を決したように口を開いた


「この前、先輩に聞かれましたよね。『私ってそんなに怖い主将だった?』って。」


「うん・・・。」


「その時、俺はこう答えました。『怖くて、厳しくて。でも凛々しくて、カッコよくて、そしてとてつもなく可愛かったです』って。」


「・・・。」


「実はあの言葉には、続きがあります。」


「?」


「『そんな先輩が、主将が大好きでした』って。」


「尚輝・・・。」


「その気持ちは、今でも変わってません。もし今、そう俺が付け加えたら・・・それでも先輩は一緒にやってくれますか?」


尚輝はそう言うと、まっすぐに彩を見た。その真剣なまなざしを、しっかりと受け止めた彩は、視線を逸らすことなく、尚輝を見つめ返していたが、やがてフッと表情を緩めた。


「気が付いてるかな?」


「えっ?」


「尚輝に何回告白されたかな?本当に数えきれないくらい告られた。その度に私は『無理』って答えた。でもね・・・私は尚輝のことを1度も『嫌い』とも、告白が『迷惑』とも言わなかったはずだよ。」


「先輩・・・。」


「確かに最初の内は本当に『無理』だった。でもいつの間にか、それが『(今は)無理』に変わってたことに、自分で気付くのに、ずいぶん時間が掛かった。」


「・・・。」


「私は尚輝が羨ましかった。自分の気持ちを真っすぐに私に伝えられる、尚輝の勇気が眩しくて、多分嫉妬してたんだと思う。それに引き換え、私は・・・って。だからあなたの気持ちに素直に向き合えなくて、あんな素っ気ない態度ばっかりとってたんだろうな。あ~ぁ、こうやって話してると、ドンドン自分で自分が嫌になってくる。つくづくあの頃の私は、子供でちっちゃい奴だったなって。」


それはあまりにも意外な告白。尚輝は半ば茫然と立ち尽くしたように、彩の言葉を聞いている。
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