Far away ~いつまでも、君を・・・~
夏の日はまだ高い。部活も終わり、徐々に人影も少なくなっている校内の一角で、2人は向き合っている。
「自分の気持ちにいつ気が付いたんだろうな?そうだ、尚輝が一回、作戦かなんかで、私と距離置いたことがあったでしょ。その時に遥に『自分で気が付いてるかどうか知らないけど、二階くんのこと、結構目で追ってるよ。』って言われてびっくりしたことがあった。その時に『ああ私、本当は尚輝のこと、気になってるんだな』って自分の中で認めたんだと思う。あれだけ好きだって、言ってもらったら、相手がよっぽど嫌な奴かキモくない限り、だんだんこちらも好意を持つのが自然なんだろう、ね。」
照れ臭そうに言った彩を見ながら、
(あれは京香のアドバイスだったな・・・。)
尚輝の胸に、思い出が甦る。
「それでも素直には、なかなか自分の気持ちが認められなくて、言い出せなくて・・・。部活引退したらとか、受験が終わったらとか、卒業式の日にとか、なんか一所懸命に先延ばしする理由を見つけてるうちに、あなたにここで言われた。『これが最後の告白、もし今度の大会で斗真先輩の記録を超えられたら、付き合って欲しい。』って。今だから言う。いろいろもったい付けたこと、言ったけど、あんなの全部ウソ。照れてただけ、つまんない意地を張ってただけ。あなたの本気がひしひしと伝わって来てたから、だから試合の結果なんて、もうどうでもよかった。試合が終わったら、ちゃんと言うつもりだった。『今まで素直になれなくてごめんね。私は尚輝のことが好きです。』って。でも言えなくなっちゃった・・・。」
ここで、彩は少し寂し気な表情を浮かべた。
「彩、先輩・・・?」
「京香ちゃんが来てたんだよ。陰に隠れるようにひっそりと。そして、手を胸の前で合わせて、祈ってたんだ。その姿を見た時、どんなに彼女が尚輝のことを想っているのか、一瞬にして分かった。京香ちゃんはさ、自分の気持ちを押し隠して、私を追いかけまわしてるあなたを必死になって応援してたんだ。それが分かった時、さんざん尚輝の気持ちを弄んで来た自分が、今更尚輝のことが好きだなんて、とても言えないなって・・・。」
京香が試合を見に来てたことは、尚輝はつい最近、京香に別れを告げられたあの日まで知らなかった。なぜ京香はひっそりと試合を見ていたのか。それは自分の思いを尚輝にまだ知られたくなかったのと、恐らく尚輝を素直に応援してないことに、後ろめたさを感じていたからだろう。
その姿を見て、でも彩は京香の尚輝への思いを知り、京香は誰にも気付かれないように、密かに尚輝の成功を祈る彩の姿を見て、その本心を知ったのだ。それは切ないくらいのボタンの掛け違いだったと、尚輝は思わざるを得なかった。
「自分の気持ちにいつ気が付いたんだろうな?そうだ、尚輝が一回、作戦かなんかで、私と距離置いたことがあったでしょ。その時に遥に『自分で気が付いてるかどうか知らないけど、二階くんのこと、結構目で追ってるよ。』って言われてびっくりしたことがあった。その時に『ああ私、本当は尚輝のこと、気になってるんだな』って自分の中で認めたんだと思う。あれだけ好きだって、言ってもらったら、相手がよっぽど嫌な奴かキモくない限り、だんだんこちらも好意を持つのが自然なんだろう、ね。」
照れ臭そうに言った彩を見ながら、
(あれは京香のアドバイスだったな・・・。)
尚輝の胸に、思い出が甦る。
「それでも素直には、なかなか自分の気持ちが認められなくて、言い出せなくて・・・。部活引退したらとか、受験が終わったらとか、卒業式の日にとか、なんか一所懸命に先延ばしする理由を見つけてるうちに、あなたにここで言われた。『これが最後の告白、もし今度の大会で斗真先輩の記録を超えられたら、付き合って欲しい。』って。今だから言う。いろいろもったい付けたこと、言ったけど、あんなの全部ウソ。照れてただけ、つまんない意地を張ってただけ。あなたの本気がひしひしと伝わって来てたから、だから試合の結果なんて、もうどうでもよかった。試合が終わったら、ちゃんと言うつもりだった。『今まで素直になれなくてごめんね。私は尚輝のことが好きです。』って。でも言えなくなっちゃった・・・。」
ここで、彩は少し寂し気な表情を浮かべた。
「彩、先輩・・・?」
「京香ちゃんが来てたんだよ。陰に隠れるようにひっそりと。そして、手を胸の前で合わせて、祈ってたんだ。その姿を見た時、どんなに彼女が尚輝のことを想っているのか、一瞬にして分かった。京香ちゃんはさ、自分の気持ちを押し隠して、私を追いかけまわしてるあなたを必死になって応援してたんだ。それが分かった時、さんざん尚輝の気持ちを弄んで来た自分が、今更尚輝のことが好きだなんて、とても言えないなって・・・。」
京香が試合を見に来てたことは、尚輝はつい最近、京香に別れを告げられたあの日まで知らなかった。なぜ京香はひっそりと試合を見ていたのか。それは自分の思いを尚輝にまだ知られたくなかったのと、恐らく尚輝を素直に応援してないことに、後ろめたさを感じていたからだろう。
その姿を見て、でも彩は京香の尚輝への思いを知り、京香は誰にも気付かれないように、密かに尚輝の成功を祈る彩の姿を見て、その本心を知ったのだ。それは切ないくらいのボタンの掛け違いだったと、尚輝は思わざるを得なかった。