Far away ~いつまでも、君を・・・~
「そして、あなたは京香ちゃんと付き合い始めた。それでよかったんだと、私は思った。そして自分の気持ちに静かに蓋をした。その気持ちがもう2度と蘇って来ないようにと、ね。大学入学を機に、こっちを離れることになったから、ちょうどいいと思ったし。」
「・・・。」
「でもね、誤算だったのは、自分が予想以上に諦めが悪いことを知らなかったこと。」
「先輩・・・。」
「蓋をしたはずなのに、私の心の中にはそれからもずっと尚輝がいた。こんなに引き摺るんなら、もっと早く素直になればよかったって、何回後悔したか。私、ほとんど里帰りもせず、弓道部のOB・OG会にも顔を出さなかった。大学や仕事が忙しかったのはウソじゃないけど、でも何とかなる時もあったはず。それをしなかったのは、たぶん・・・ううん間違いなく尚輝に会うのを避けてたから。あなたたちがずっと遠恋してたから、うっかり自分の気持ちが漏れちゃって、あなたたちの間に波風立てるのが嫌だったんだ。それだけは・・・絶対に嫌だった・・・。」
彩はここで、フッと息をついた。
「今回、私が帰郷を決めた時は、正直、2人のことを考える余裕なんかなかった。それに今更、あなたたちの間に入り込む隙間なんて、あるはずないと思ってたし。でも・・・京香ちゃんには、全部お見通しだったんだね・・・。」
そして、静寂が訪れた。彩は尚輝から視線を外すと、また目の前のアジサイを見つめ、尚輝は何を言っていいのか、わからないと言わんばかりに沈黙している。
「随分一人で喋っちゃった。そろそろ結論言うね。」
やがて、その静寂を彩が破る。
「延々となにが言いたかったか。それは結局私は、本当は高校生の頃から尚輝のことが好きだったっていう、私たちを知ってる人たちが聞けば、驚天動地の事実なんだよね。」
照れ笑いとも苦笑いともつかない表情で、彩がその言葉を口にした瞬間
「彩、先輩・・・。」
彼女の名を呼んだあと、尚輝は時が止まったように固まってしまった。
「その事実に気付いて、自分で認めて、言葉にするまで、私は10年掛かっちゃった。その結果、尚輝を振り回して、京香ちゃんを苦しめて・・・本当に迷惑な女だよね、私。」
「・・・。」
「京香ちゃんには、今でも申し訳ないと思ってる。彼女の思いやりに甘えるのは、やっぱり卑怯じゃないかっていう気持ちもある。それに、自分の気持ちに素直になるって、実はとっても難しい。勇気を振り絞って、前に進んだら、待っていたのは、とんでもないバッドエンドだったりもする。だから・・・ずっと逃げて来たんだろうな。」
そう言って、彩は少し遠くを見つめる。
「・・・。」
「でもね、誤算だったのは、自分が予想以上に諦めが悪いことを知らなかったこと。」
「先輩・・・。」
「蓋をしたはずなのに、私の心の中にはそれからもずっと尚輝がいた。こんなに引き摺るんなら、もっと早く素直になればよかったって、何回後悔したか。私、ほとんど里帰りもせず、弓道部のOB・OG会にも顔を出さなかった。大学や仕事が忙しかったのはウソじゃないけど、でも何とかなる時もあったはず。それをしなかったのは、たぶん・・・ううん間違いなく尚輝に会うのを避けてたから。あなたたちがずっと遠恋してたから、うっかり自分の気持ちが漏れちゃって、あなたたちの間に波風立てるのが嫌だったんだ。それだけは・・・絶対に嫌だった・・・。」
彩はここで、フッと息をついた。
「今回、私が帰郷を決めた時は、正直、2人のことを考える余裕なんかなかった。それに今更、あなたたちの間に入り込む隙間なんて、あるはずないと思ってたし。でも・・・京香ちゃんには、全部お見通しだったんだね・・・。」
そして、静寂が訪れた。彩は尚輝から視線を外すと、また目の前のアジサイを見つめ、尚輝は何を言っていいのか、わからないと言わんばかりに沈黙している。
「随分一人で喋っちゃった。そろそろ結論言うね。」
やがて、その静寂を彩が破る。
「延々となにが言いたかったか。それは結局私は、本当は高校生の頃から尚輝のことが好きだったっていう、私たちを知ってる人たちが聞けば、驚天動地の事実なんだよね。」
照れ笑いとも苦笑いともつかない表情で、彩がその言葉を口にした瞬間
「彩、先輩・・・。」
彼女の名を呼んだあと、尚輝は時が止まったように固まってしまった。
「その事実に気付いて、自分で認めて、言葉にするまで、私は10年掛かっちゃった。その結果、尚輝を振り回して、京香ちゃんを苦しめて・・・本当に迷惑な女だよね、私。」
「・・・。」
「京香ちゃんには、今でも申し訳ないと思ってる。彼女の思いやりに甘えるのは、やっぱり卑怯じゃないかっていう気持ちもある。それに、自分の気持ちに素直になるって、実はとっても難しい。勇気を振り絞って、前に進んだら、待っていたのは、とんでもないバッドエンドだったりもする。だから・・・ずっと逃げて来たんだろうな。」
そう言って、彩は少し遠くを見つめる。