Far away ~いつまでも、君を・・・~
会の終わりに、御礼挨拶に立った斗真は
「今日、僕は改めて、弓道をやっていてよかったと思いました。弓道のお陰で、僕はこんな素晴らしい仲間達に出会えたことを改めて感謝しました。そして弓道は言うまでもなく、自らの心身を磨く武道です。僕はそのことをもう1度、肝に銘じて、みなさんに恥ずかしくない生き方をして行くことをここにお誓いします。本日はまことにありがとうございました。」
そう言って、一礼した斗真の横には、寄り添うように由理佳が立ち、一緒に頭を下げていた。そんな2人に会場からは大きな拍手が巻き起こった。
こうして会はお開きとなり、早ければまたひと月後のOB・OG会で再会を、そんな言葉を交わしながら、参加者は三々五々、会場を去って行く。
そんな彼ら一人一人に声を掛けて、見送っている斗真と由理佳の姿を、彩は離れて見つめていた。
「彩。」
そんな彩に遥が声を掛けた。
「何、見てるの?」
「うん、斗真先輩の横にはやっぱり由理佳さんが一番しっくり来るなぁって。」
そう言った彩の顔を、思わず見つめた遥。
「やっぱり、心が痛む?」
「何も思うことがないかと聞かれば、正直そんなことはないけど、でも後悔とかそういうのとも、ちょっと違う。なんか運命ってやっぱりあるのかもしれないなって。」
「そっか、そうかもね・・・。」
彩の言葉に、遥は頷いた。
「あっ遥先輩、お疲れ様でした。」
そこへやって来た尚輝。まずは遥に声を掛けると
「じゃ彩、そろそろ行こうか?」
すぐに彩の方を向いた。
「これからどっか行くの?」
「はい、これから式の打ち合わせがあって。」
「そうか。式場、ここだもんね。でもあなたたちの式はまだ半年以上先じゃない。」
「準備に時間を掛けるのは悪いことじゃないし、それに俺たち、案外時間合わないんですよ。じゃ、そういうことで失礼します。彩、行こう。」
「うん。」
促されて頷いた彩がそっと手を差し出すと、尚輝は躊躇うことなく、その手を取って歩き出す。遥がその後ろ姿を見送っていると
「『彩』だって。」
笑いを堪えたような声を出して、町田が並んで来た。
「別に不思議じゃないでしょ?だって二階くんは彩の彼氏、フィアンセなんだから。」
「そりゃそうだけどさ。あの2人をずっと見て来た立場からすれば、尚輝に呼び捨てにされた廣瀬が、はにかみながら、奴を見上げて、そっと手を差し出すなんて、冗談としか思えん。」
「そんな、悪いよ。」
夫の言葉に、遥は一応窘めるような言葉を吐くが、その表情はあまり真剣とは言えなかった。
「でも・・・まぁよかった。随分遠回りしたけどな、アイツら。」
「そうだね。ものすごく遠回りだったけど、彩と二階くんには、彩が二階くんの胸に、素直に飛び込めるようになるには、必要な時間だったんだと思う。さっきの話じゃないけど、それが2人の運命だったんだよ。」
「かもしれないな。」
親友夫妻が、そんなことを話していることなど、知る由もなく、笑顔で歩を進める彩は、恋人とつないだ手から伝わって来るぬくもりから感じる幸せを、噛み締めていた。
END
「今日、僕は改めて、弓道をやっていてよかったと思いました。弓道のお陰で、僕はこんな素晴らしい仲間達に出会えたことを改めて感謝しました。そして弓道は言うまでもなく、自らの心身を磨く武道です。僕はそのことをもう1度、肝に銘じて、みなさんに恥ずかしくない生き方をして行くことをここにお誓いします。本日はまことにありがとうございました。」
そう言って、一礼した斗真の横には、寄り添うように由理佳が立ち、一緒に頭を下げていた。そんな2人に会場からは大きな拍手が巻き起こった。
こうして会はお開きとなり、早ければまたひと月後のOB・OG会で再会を、そんな言葉を交わしながら、参加者は三々五々、会場を去って行く。
そんな彼ら一人一人に声を掛けて、見送っている斗真と由理佳の姿を、彩は離れて見つめていた。
「彩。」
そんな彩に遥が声を掛けた。
「何、見てるの?」
「うん、斗真先輩の横にはやっぱり由理佳さんが一番しっくり来るなぁって。」
そう言った彩の顔を、思わず見つめた遥。
「やっぱり、心が痛む?」
「何も思うことがないかと聞かれば、正直そんなことはないけど、でも後悔とかそういうのとも、ちょっと違う。なんか運命ってやっぱりあるのかもしれないなって。」
「そっか、そうかもね・・・。」
彩の言葉に、遥は頷いた。
「あっ遥先輩、お疲れ様でした。」
そこへやって来た尚輝。まずは遥に声を掛けると
「じゃ彩、そろそろ行こうか?」
すぐに彩の方を向いた。
「これからどっか行くの?」
「はい、これから式の打ち合わせがあって。」
「そうか。式場、ここだもんね。でもあなたたちの式はまだ半年以上先じゃない。」
「準備に時間を掛けるのは悪いことじゃないし、それに俺たち、案外時間合わないんですよ。じゃ、そういうことで失礼します。彩、行こう。」
「うん。」
促されて頷いた彩がそっと手を差し出すと、尚輝は躊躇うことなく、その手を取って歩き出す。遥がその後ろ姿を見送っていると
「『彩』だって。」
笑いを堪えたような声を出して、町田が並んで来た。
「別に不思議じゃないでしょ?だって二階くんは彩の彼氏、フィアンセなんだから。」
「そりゃそうだけどさ。あの2人をずっと見て来た立場からすれば、尚輝に呼び捨てにされた廣瀬が、はにかみながら、奴を見上げて、そっと手を差し出すなんて、冗談としか思えん。」
「そんな、悪いよ。」
夫の言葉に、遥は一応窘めるような言葉を吐くが、その表情はあまり真剣とは言えなかった。
「でも・・・まぁよかった。随分遠回りしたけどな、アイツら。」
「そうだね。ものすごく遠回りだったけど、彩と二階くんには、彩が二階くんの胸に、素直に飛び込めるようになるには、必要な時間だったんだと思う。さっきの話じゃないけど、それが2人の運命だったんだよ。」
「かもしれないな。」
親友夫妻が、そんなことを話していることなど、知る由もなく、笑顔で歩を進める彩は、恋人とつないだ手から伝わって来るぬくもりから感じる幸せを、噛み締めていた。
END