Far away ~いつまでも、君を・・・~
番外編 やっぱり、側にいたい
そのニュ-スを目にした時、私は一瞬、目を疑った。


「ウソでしょ・・・。」


その言葉が、思わずついて出た。だけど、私、宮田由理佳が目にしたネット記事は、見間違えでもなければ、誤報でもなかった。


元証券マン数人がインサイダ-取引容疑で逮捕されたという記事。その容疑者の中に、元カレ本郷斗真の名前を見た時は、本当に目の前が一瞬、真っ暗になった。


私はもっと詳細な事実を知りたくて、検索を続けたが、結局それ以上の情報を得ることは出来なかった。


(証券マンにとって、インサイダ-取引に関与するなんて、最低なことじゃない・・・まさかそこまで堕ちていたなんて・・・斗真、あなた、何考えてるの!)


パソコンの画面から目を離すと、身体が震えるような怒りが、改めてこみ上げてくる。


高校の1年先輩である斗真とは、12年に渡って付き合ってきたが、別れてから、もう半年以上経った。大学を出て、証券マンになった斗真。優秀な彼は、証券マンとして、着実な実績を積み上げ、出世街道を走っていたが、結果多忙となり、私とはすれ違いが増えてしまった。


それだけではなく、成果主義の証券業界において、同世代のサラリ-マンより高額の収入を得ていた彼は、次第に生活が派手になって行き、私から見れば、背伸びした交友関係に染まって行った。


やがてそんな交友関係をバックに、斗真が会社からの独立を口にするに及んで、たまりかねた私は彼にもっと地に足をつけて欲しいと忠告した。


その私の忠告に、斗真は反発し、私たちの距離はどんどん広がって行き、結局、その溝を埋めることが出来ずに、私たちは別れることにした。


寂しくなかった、悲しくなかった、辛くなかったと言ったら、嘘になる。だけど、斗真は変わってしまった。もう一緒の道を歩むことは出来ない。それが私の、私たちの結論だった。


そんな経緯に思いを馳せていた私の脳裏にふと、高校時代の1年後輩である廣瀬彩の悲し気な表情が浮かんで来た。その途端、私の中にあった怒りは霧散し、胸が締め付けられるように苦しくなる。


(彩、ごめん・・・。)


次の瞬間、心の中で、思わず彼女に詫びていた。
< 340 / 353 >

この作品をシェア

pagetop