Far away ~いつまでも、君を・・・~
伊藤さんから連絡を受けた私は


「彩が彼と会った後なら、私はいつでも会いに行きます。とりあえず、まず斗真は彩に会うべきです。会って、あの子に謝罪して、これからどうするのか、キチンと話し合うべきです。」


と答えた。


『同感だ。廣瀬さんには真っ先に連絡したが、少し考えさせてほしいとのことだった。彼女にしてみれば、何を今更という思いなんだろう。その気持ちは当然だと思う。本郷が廣瀬さんにとった態度や仕打ちは、そのくらい酷いものだったからな。だけど、それを承知で俺は弁護士としてではなく、奴の友人として、会ってやって欲しいとお願いした。なんとか彼女が受け入れてくれるといいんだが・・・。』


伊藤さんは心配そうな声を出したが、私は彩という子をよく知っている。あの子なら絶対にもう1度、斗真とキチンと向き合うことを選ぶはずだと確信していた。そしてその確信は現実のものとなった。


斗真と会った日の夜、彩は私に連絡して来た。もしよろしかったら、お目に掛かれませんかという彼女の言葉に、私は2つ返事で頷いた。


仕事帰りの私を待ち受けていた彩と連れ立って、2人で何度か利用したことのある個室のあるイタリアンカフェに入った。


「由理佳さんは、斗真先輩の裁判をずっと傍聴されたんですよね。」


注文を終え、向き合った私たち。彩が尋ねて来た。


「うん、どうしても仕事休めない時もあったから、全部じゃないけど。」


「どうしてですか?」


「わかんないな。傍聴したかったから、としか答えようがない。」


笑いながら答えると


「そうですか・・・。だとしたら、私はやっばり見たくなかったんですかね?被告人席に座るあの人のことを。」


複雑そうな表情で彩は言った。


「斗真から来ないでくれって言われてたんでしょ?」


「はい、でも先輩の彼女なら行くべきでしたよね、やっぱり。」


「う〜ん、どうなのかな?」


「由理佳さんなら、斗真先輩に何を言われても、きっと行ったはずです。」


「だろうね、別れてるのに、押しかけてるんだから。」


冗談めかして言ってみるけど、彩の表情は固い。


「考えてみれば変だよね。」


「えっ?」


「私が彼のこと、未だに『斗真』って言って、彩が『斗真先輩』って。」


その私の言葉に、彩は真っ直ぐこちらを見た。
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