Far away ~いつまでも、君を・・・~
「私、先輩に言っちゃいました。『お帰りをお待ちしてますなんて、殊勝なことを言うつもりはありません』って。」


彩はそう言うと、一瞬俯いたが、すぐに顔を上げると


「冷たい女ですよね、私。」


寂しそうな表情で言った。


「そんなことないよ。」


私は首を振る。


「彩にしてみれば、本当に百年の恋も冷めるような展開だった。それが当たり前だと思う。」


「由理佳さん・・・。」


この後、私たちは飲み物や料理に口を付けたが、彩はこの後、地元に帰らなければならない。そんなにゆっくりしている時間はない。


「彩。」


「はい。」


「実は私も今度、斗真と会うんだ。」


「そうなんですか?」


私の言葉を聞いて、彩は驚いた表情になる。


「向こうから会いたいと言って来たから。会ったら、これまで溜まってることを全部ぶつけてやるから。彩の分まで。」


「大丈夫です、私は先輩に言いたいこと、全部伝えましたから。」


そう言って彩は笑った。


「そっか・・・じゃ、私は本当に自分が言いたいことだけ、彼にぶつければいいんだ。」


「はい。」


「彩はそれでいいの?」


私が問うと


「由理佳さんが斗真先輩に伝えようと思っていることは、わかるつもりです。そしてそれがきっと、お2人にとって良いことだと、私は思います。」


彩は、私の目を見て言った。その真っすぐな瞳が、彼女が心からそう思っていることを伝えてくれる。


「じゃ、そうさせてもらうから。」


その私の言葉に、彩はコクリと頷いて見せた。


翌日、出勤した私は清水さんに時間を取ってもらった。空いていた応接室、ソファ-に腰掛けて、こちらを見る清水さんに、私は一通の封書を差し出した。


「ラブレタ-じゃないのか?」


『退職願』と書かれた文字を見ながら、清水さんは冗談めかして言う。


「長い間、お世話になりました。まだ完全に決まったわけではありませんが、恐らく郷里に帰ることになりますので。」


そう言って頭を下げた私に


「少なくとも、宮田の気持ちは決まったってことか?」


清水さんは聞いて来る。


「はい。」


「そうか・・・残念だが仕方がない。俺に対する答えは確かに受け取った。」


そう言って、一瞬寂しそうな表情を浮かべた清水さんは


「だが、これはもう1度考え直せ。」


と言うと、退職届を私に突き返して、清水さんは立ち上がった。
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