Far away ~いつまでも、君を・・・~
私が斗真のもとに向かった日は、爽やかに晴れ渡っていた。最寄り駅で待ち合わせをした伊藤先輩に案内されて、拘置所の門をくぐる時は、彩も言っていたが、やっぱり緊張した。
日常生活では、なかなか味わうことのできない、独特の雰囲気に包まれた建物の中を歩いて、面談室に入り、待ち受けること数分。
アクリル板を挟んでとは言え、久しぶりに向かい合った私たち。
「今日はわざわざ済まなかった。」
そう言って、まず頭を下げて来た斗真は
「裁判も・・・ずっと傍聴してくれたみたいで・・・。」
おどおどとしたその態度は、私の知ってる、私の愛した斗真には程遠かった。
「欲に目がくらんだ挙句、私を捨てた男の成れの果てを見届けたかったからね。」
私がそう言い放つと、斗真は俯き、何も聞いていない建前になっている刑務所の職員が、思わず私の顔を覗き込んでいる。斗真に対して、相当腹が立っているのは確かだけど、さすがにいきなり言い過ぎたかと、少し後悔する。
「なんで控訴しなかったの?」
やや口調を和らげて尋ねると
「これ以上、恥をさらしたくなかった。それに少しでも早く贖罪を済ませ、迷惑を掛けた人に償いたかった。今の俺に出来ることは、それしかないから。」
相変わらず、私と目を合わさずに答える斗真。
「それは殊勝な心掛けだけど、でもね、斗真はいろんな人を裏切ったんだよ。そのことを本当にわかってる?私は法律の専門家じゃないけど、懲役1年なんて軽すぎる。私に言わせれば、懲役100年くらいに値すると思うよ。」
更に畳み掛けると
「わかってる。」
ポツンと斗真が答える。その答えに私が思わず彼の顔を見ると
「それがわかってたから、俺はみんなの面会から逃げ回ってた。でもずっと裁判を傍聴に来ているお前の厳しい顔を見るにつけ、そんな自分の弱さが本当に情けなくなって・・・。だから俺は実刑でも絶対に控訴しない。そう決めてたんだ。」
ここで斗真はようやく私を見た。
「そっか・・・それを聞いて、ちょっとホッとしたよ。」
「えっ?」
「斗真がやっと本当の斗真に戻り始めてるみたいだから。」
そう言って、私が笑みを漏らすと
「由理佳の・・・お陰だ。ありがとう。」
斗真もフッと笑顔になった。
日常生活では、なかなか味わうことのできない、独特の雰囲気に包まれた建物の中を歩いて、面談室に入り、待ち受けること数分。
アクリル板を挟んでとは言え、久しぶりに向かい合った私たち。
「今日はわざわざ済まなかった。」
そう言って、まず頭を下げて来た斗真は
「裁判も・・・ずっと傍聴してくれたみたいで・・・。」
おどおどとしたその態度は、私の知ってる、私の愛した斗真には程遠かった。
「欲に目がくらんだ挙句、私を捨てた男の成れの果てを見届けたかったからね。」
私がそう言い放つと、斗真は俯き、何も聞いていない建前になっている刑務所の職員が、思わず私の顔を覗き込んでいる。斗真に対して、相当腹が立っているのは確かだけど、さすがにいきなり言い過ぎたかと、少し後悔する。
「なんで控訴しなかったの?」
やや口調を和らげて尋ねると
「これ以上、恥をさらしたくなかった。それに少しでも早く贖罪を済ませ、迷惑を掛けた人に償いたかった。今の俺に出来ることは、それしかないから。」
相変わらず、私と目を合わさずに答える斗真。
「それは殊勝な心掛けだけど、でもね、斗真はいろんな人を裏切ったんだよ。そのことを本当にわかってる?私は法律の専門家じゃないけど、懲役1年なんて軽すぎる。私に言わせれば、懲役100年くらいに値すると思うよ。」
更に畳み掛けると
「わかってる。」
ポツンと斗真が答える。その答えに私が思わず彼の顔を見ると
「それがわかってたから、俺はみんなの面会から逃げ回ってた。でもずっと裁判を傍聴に来ているお前の厳しい顔を見るにつけ、そんな自分の弱さが本当に情けなくなって・・・。だから俺は実刑でも絶対に控訴しない。そう決めてたんだ。」
ここで斗真はようやく私を見た。
「そっか・・・それを聞いて、ちょっとホッとしたよ。」
「えっ?」
「斗真がやっと本当の斗真に戻り始めてるみたいだから。」
そう言って、私が笑みを漏らすと
「由理佳の・・・お陰だ。ありがとう。」
斗真もフッと笑顔になった。