Far away ~いつまでも、君を・・・~
それから、時は流れて・・・。


今、私は斗真の出所を出迎えるべく、拘置所の前にいる。荷物を抱え、見送りの職員に一礼して出て来た斗真は、私の姿を認めて固まる。


「由理佳・・・。」


「お勤め、ご苦労様でした!」


そう言って最敬礼すると


「バ、バカ。お前、何やってんだよ。」


斗真が慌てている。


「だって、ムショ帰りの人を出迎える時は、こうするんでしょ?」


からかい気味にそう言ってやると


「お前なぁ。それ、どこで得た知識なんだよ。」


斗真は顔を赤らめて、言い返して来る。なんかこの雰囲気が嬉しくて、私は笑うと


「さぁ行くよ。」


と先導するように歩き出そうとする。


「ちょっと待てよ。」


それを引き止める斗真。


「なに?」


「なにって、お前・・・。」


「彩が待ってると思った?」


「・・・。」


「残念ながら、彩はもう二階に首ったけだよ。」


更にからかうように言うと


「いや、それは聞いてるけど・・・。」


斗真は戸惑いを隠せないまま。そうだよね、私たちは別れてるんだし、あれっきり面会にも行かなかったからね。今日はお母さんと伊藤さんが出迎えに来る、斗真はそう思っていたはずだ。


「住む所は、もう決めてあるから。」


「えっ?」


「落ち着いたら、すぐに就職活動だからね。」


そんな彼の戸惑いに気付かぬ体で、話を進める私。


「だから由理佳、住む所って・・・。」


「私と斗真のに決まってるじゃない。」


「!」


ここで斗真の驚きは最高潮に達した様子。


「さぁ、行くよ。お父さんやお母さんもみんな待ってるから。」


そう言って歩き出そうとする私を


「だから、待てって。」


引き止める斗真の表情はいよいよ真剣に。


「なぁ、俺たちは別れたんだぞ。まさか忘れたわけじゃあるまい?」


「そんなこともあったね。」


「由理佳・・・。」


「信用できない。」


「えっ?」


「なんか、この前会った時は殊勝なことを言ってたけど、やっぱり信用できなくってさ。だから一緒に住んで、監視することにした。」


私の言い草に、斗真は言葉を失っている。


「感謝しなさいよ。その為に、ダンディな上司の口説きを断って、10年近く勤めた会社も辞めて、故郷に戻って、新しい就職先も探して、あなたが帰って来ても困らない環境を整えておいたんだから。」


そう言って、私は笑顔で斗真を見る。
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