Far away ~いつまでも、君を・・・~
「バカなこと、言ってるな!」


私の言う事を、唖然としながら聞いていた斗真は、ハッと我に返ったように大声を出した。


「由理佳。俺はもう昔の俺じゃない。前科者なんだぞ。」


「知ってるよ。」


「知ってるよって・・・あっけらかんと何、言ってるんだ。そりゃ殺人とか強盗とかの重犯罪じゃないけど、それでもこれから俺は世間に後ろ指差されて、生きて行かなきゃならないんだ。」


「・・・。」


「俺は自分の仕出かしたことだ、一生背負って行くよ。でもお前は・・・もう俺の彼女でも何でもないお前が、そんな奴とわざわざ一緒に暮らすって、意味わかってるのかよ?世間を甘く見るな!」


懸命に言い募る斗真を、私はじっと見ている。そして


「みんなに同じこと言われたよ、斗真のご両親にまで。変な同情心で、人生を狂わさないで欲しいって。」


と言葉を紡ぐ。


「でもね、応援してくれた人が、たった一人だけいたんだよ。『私がこんなことを言うのはずるい、ううん卑怯だとは思います。でもやっぱり斗真先輩には由理佳さんが必要なんです。私には、私だからわかるんです。応援します、そして斗真先輩をよろしくお願いします。』って。誰の言葉だか、当然わかるよね。」


この言葉に、斗真はコクリと頷く。


「斗真は幸せだね。元カノにこんなに心配されて、元元カノには、また元サヤに戻りたいって言わせてるんだから。大事にしないとバチが当たるからね。」


そう言って笑い掛けた私の顔を、斗真は茫然と見つめている。


「斗真。」


私は笑顔を納めると


「あなたの言う通り、これからのあなたの人生は、間違いなく苦難の道のりだと思う。でもそれにめげて、またみんなを裏切るようなバカな真似はしないって、今ここで私に誓える?」


そう言って、じっと斗真を見つめる。


「ああ、約束する。」


力強く頷く斗真。


「だったら、私もとことん付き合ってあげる。斗真には私が必要、彩はそう言ってたけど、私にも・・・斗真がやっぱり必要だから。」


「由理佳・・・。」


その言葉に、斗真の目に涙が浮かび、彼は私を抱き寄せようとする。しかし


「今は・・・ダメ。」


私はストップを掛ける。


「真っ昼間の、それも拘置所の前なんて、勘弁してよ。前の斗真は、そんなムードを解さない人じゃなかったはずだよ。」


そう言って笑うと


「すまん。」


斗真もそう言って笑った。


「じぁ、行こうか?」


「・・・ああ。」


そうして笑顔を交わすと、私たちは寄り添って歩き出した。



END
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