Far away ~いつまでも、君を・・・~
試験が終わった学内は、文化祭ム-ド一色になっているが、今年は新人戦とスケジュ-ルがバッチリ重なってしまった弓道部はそれどころではなく、日曜返上のまさに臨戦態勢。


「新人戦とその後の県大会。少なくともどちらかには、23名全員エントリ-させるからな。そのつもりで練習に取り組め。」


児玉の言葉に、全員が頷いた。まず、間近に迫った新人戦には、1年生を中心に、一部2年生も加わり、対外試合デビュ-を果たす。


「今回の2戦で、今の自分達の力も、他校の力もある程度わかる。その後の全国大会県予選に向けて、重要な試合になる。いいな。」


「はい!」


児玉の檄に、元気よく応じる部員達。インハイ予選の時と違い、全員が試合に出るとあって、練習時の緊迫は、より増して来ていた。


「でもさ、よりによって、学祭とぶつかるなんて、ついてねぇよな。」


その日の練習が終わり、尚輝たち1年男子3名が、肩を並べて更衣室に向かう途中、その中の1人、木下倫生(きのしたみちお)がそんなことを言い出した。


「そうだよな。高校に入ったら、学祭はやっぱり楽しみだったからなぁ。他校から可愛い子も一杯来るみたいだし、クラスメイトのあの子とお近づきになるいいチャンスだもんなぁ。」


と応じた鮫島淳(さめじまじゅん)


「なんだよ、結局女子目当てかよ。」


ツッコむ尚輝。


「それ以外に何があるんだ。」


と反論する鮫島に


「文化祭の準備を通じて、クラスメイトとの絆、友情を深めるとか、いろいろあるだろう。それも大切だが、今の俺達は、とにかく新人戦に向けて、全力投球。それしかねぇよ。」


言い返す尚輝。


「へぇ、なかなかいいこと、言うじゃない。」


そこへ、横合いから声が聞こえて来た。驚いて振り向くと


「主将。」


彩が立っていた。
< 36 / 353 >

この作品をシェア

pagetop