Far away ~いつまでも、君を・・・~
遥の率いる女子Bチームも、7中で予選通過ラインをクリア。


だが3番手の男子チームは、町田が2中したが他の2人は、的中がない。


(ちょっと、いくらなんでも・・・。)


男子の主力級のこの体たらくに、さすがに彩は文句の1つも言いたくなるが、グッと言葉を呑み込む。


だが町田は


「おいおい、全滅か?勘弁してくれよ。」


とニヤニヤしながら、他の2人に声を掛け


「悪ぃ、悪ぃ。」


答える方もやはりニヤニヤ顔。


「次は本気出すからさ。」


「頼むぜ。」


真剣味が感じられない会話に、彩が思わず、一歩前に出ようとすると、横にいた遥がそれを制する。黙って首を振る遥に、微かに頷いて見せた彩は


「じゃ、もう1回行くよ。」


気を取り直して、自分のチームのメンバーに声を掛ける。


その後も立練は続けられ、女子2チームは、安定して5中をクリア、2ケタの的中数も出るようになっていたが、男子チームは通過ラインを行ったり来たりという状態。やがて


「ちょっと休憩するか。おい、みんな、俺たちが休んでる間、少し練習しろよ。」


町田は、今回は出場しない部員たちに声を掛ける。


「マチヒロ、勝手に指示出さないで。まだ・・・。」


彩が慌てて、声を掛けると


「いいじゃんか。あんまり根詰めてやっても、しょうがねぇだろう。」


と町田は答えると、道場を出て行こうとする。


「待ちなよ、試合は明後日だよ。なんで、そんなだらけた態度なの?」


堪りかねて、彩が語気鋭く言うと


「だらけてるとは、聞き捨てなんねぇな。お前こそ、なに一人でピリピリしてんだよ。お前がそんなに余裕がないから、みんな余計なプレッシャー感じて、うまく行くものもうまく行かなくなってんだろ!」


町田もムッとした表情で言い返す。


「とにかく、勝手なことしないでよ。先生がいないんだから、今は私の指示に従ってもらう。みんなごめん、もう少し選手の練習続けるから。」


「じゃ、女子は続ければいいだろう。男子のリーダーは俺だから、俺の判断で、今は休憩を入れる。」


そう言い放つ町田。


「町田くん、それはダメ。女子とか男子とかは関係ないでしょ。弓道部はワンチームで、彩が主将なんだから。」


慌てて、遥がたしなめるが


「わかった。じゃ勝手にしな。」


突き放すように彩は言う。


「彩・・・。」


厳しい表情で自分を見つめる彩と、その横で言葉を失う遥を一瞥すると、町田はクルリと背を向けた。
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