Far away ~いつまでも、君を・・・~
そんな尚輝の独白を聞き終えた彩は


「あの時の男子、あんただったの?」


と言いながら、また、あの時のように顔を赤らめた。


「はい。その時、一目惚れしました。」


一方の尚輝は、照れもせずに、そう言い切る。


「忘れなさいよ。」


「絶対に、一生忘れません。」


「いい?あんたは、たまたま、私の中のもっとも女子っぽい瞬間を、見ちゃっただけ。だから勘違いしたんだろうけど、本当の私が、あんな乙女じゃないことくらい、そろそろ半年の付き合いなんだから、もうわかったでしょ!」


なぜか、少しキレ気味にそう言って、まっすぐに尚輝を見た彩は


「私は悲しいくらい普通で、可愛げがなくて、気配りも出来ない。それに、主将としても、チームをまとめられず、みんなを引っ張ってあげることも出来ないんだよ。」


今度は、寂しそうにそう言った。


「先輩・・・。」


「私は間違いなく、天女なんかじゃないし、主将も失格。だから、あんたもいい加減、目を覚まして、私に付き纏うなんて、時間の無駄遣いはもう止めときな。」


「・・・。」


「さ、帰ろう。」


そう言って、歩き出そうとする彩。


「待って下さいよ。」


「えっ?」


「先輩、今の言葉、本気で言ったんですか?」


と言った尚輝の言葉は、珍しくやや厳しさを帯びている。


「本当に自分のこと、主将失格だと思ってるんですか?」


「だって、大切な試合の2日前だっていうのに、チームはバラバラになっちゃったじゃない。私が主将として不甲斐ないから・・・。」


「それは違います!」


彩の言葉を遮って、尚輝は叫んだ。


「チームはバラバラになんて、なってない。先輩、あの時、マチヒロさんとそのチームの人は出て行っちゃったけど、他の部員はどうでした?誰も彼らに同調しなかった、先輩の指示に従って、練習を続けてたじゃないですか?」


「・・・。」


「みんな、先輩を主将として信頼し、慕ってるんです。俺は、何があったって、先輩に付いて行きますけど、他の部員だって、気持ちは同じなんですよ。」


「尚輝・・・。」


「先輩はそんな俺たちの思いを信じられないんですか!」


まっすぐに訴える尚輝の言葉が、その場に響く。
< 44 / 353 >

この作品をシェア

pagetop