Far away ~いつまでも、君を・・・~
⑧
年が明けた。
「どう調子は?」
「相変わらずです。」
3学期の始業式が終わった後、彩は久しぶりに由理佳と話をしていた。
「変わらないのは無事な証拠。」
「成長してないだけ、かもしれませんけど。」
「そんなことないよ。彩は成長してる、選手としても主将としても。」
そう言って、温かい笑顔をくれる由理佳。部を離れても、ちゃんといろんなことが彼女の耳には入っているようだ。
「でも、由理佳さんもいよいよ、ですね。」
「うん、来ちゃったね・・・。この制服もあと何回着られるか。」
大学入試共通テストが半月後に迫り、3年生は臨戦態勢。明日からは自由登校となり、事実上登校して来なくなる。
「斗真先輩と同じ大学が第一志望なんですよね?」
「そうなんだけど、模試の結果がなかなか厳しくて。」
そう言って、由理佳はひとつ、ため息をつく。
「部活が楽し過ぎた。もうちょっと勉強しとけばよかったよ。」
「由理佳さん・・・。」
「主将として、文武共に部員達に範を垂れようとしたけど、武の方はともかく、文の方は後任主将の足元にも及ぶものではありませんから。」
「そんなことないですよ。」
由理佳の言葉に、彩は照れ笑いを浮かべる。
「同じ大学が無理でも、なんとかあっちの大学には行きたいと思って頑張ってるんだけどね。」
「やっぱり都会に出たいですか?」
「まぁ、1度はね。今の時代でも、向こうはこっちとは違った世界があるみたいだから、憧れはあるよ。それに・・・斗真と離れてるのは、正直寂しいから。」
それが素直な気持ちなんだろうなと、彩も思う。
「ところで、彩の方はどうなってるの?」
「えっ?」
「二階とはさ?」
「止めて下さい、何もあるわけないじゃないですか。」
いたずらっぽい笑いを浮かべた由理佳にそう尋ねられて、彩は困惑顔。
「相変わらず、アタックされてるんでしょ?」
「困ってます。」
そう即答する彩に
「でも可愛いじゃない。彩だって、あんなに一途に好き好き言われたら、女冥利に尽きるんじゃない?」
尚もからかうように言う由理佳。思わず
「いくら想われても、無理なものは無理なんです!」
と強い口調で言ってしまった彩の顔を、由理佳は少し見ていたが
「そうだよね。いくら好きになられても、無理なものは無理だもんね。」
そう言って、笑い掛けてくる。
(あなたとこの手の話題するのは、結構キツイんですけど。)
思わずつぶやいてしまった心の中の言葉を、彩はもちろん口に出せるはずはなかった。
「どう調子は?」
「相変わらずです。」
3学期の始業式が終わった後、彩は久しぶりに由理佳と話をしていた。
「変わらないのは無事な証拠。」
「成長してないだけ、かもしれませんけど。」
「そんなことないよ。彩は成長してる、選手としても主将としても。」
そう言って、温かい笑顔をくれる由理佳。部を離れても、ちゃんといろんなことが彼女の耳には入っているようだ。
「でも、由理佳さんもいよいよ、ですね。」
「うん、来ちゃったね・・・。この制服もあと何回着られるか。」
大学入試共通テストが半月後に迫り、3年生は臨戦態勢。明日からは自由登校となり、事実上登校して来なくなる。
「斗真先輩と同じ大学が第一志望なんですよね?」
「そうなんだけど、模試の結果がなかなか厳しくて。」
そう言って、由理佳はひとつ、ため息をつく。
「部活が楽し過ぎた。もうちょっと勉強しとけばよかったよ。」
「由理佳さん・・・。」
「主将として、文武共に部員達に範を垂れようとしたけど、武の方はともかく、文の方は後任主将の足元にも及ぶものではありませんから。」
「そんなことないですよ。」
由理佳の言葉に、彩は照れ笑いを浮かべる。
「同じ大学が無理でも、なんとかあっちの大学には行きたいと思って頑張ってるんだけどね。」
「やっぱり都会に出たいですか?」
「まぁ、1度はね。今の時代でも、向こうはこっちとは違った世界があるみたいだから、憧れはあるよ。それに・・・斗真と離れてるのは、正直寂しいから。」
それが素直な気持ちなんだろうなと、彩も思う。
「ところで、彩の方はどうなってるの?」
「えっ?」
「二階とはさ?」
「止めて下さい、何もあるわけないじゃないですか。」
いたずらっぽい笑いを浮かべた由理佳にそう尋ねられて、彩は困惑顔。
「相変わらず、アタックされてるんでしょ?」
「困ってます。」
そう即答する彩に
「でも可愛いじゃない。彩だって、あんなに一途に好き好き言われたら、女冥利に尽きるんじゃない?」
尚もからかうように言う由理佳。思わず
「いくら想われても、無理なものは無理なんです!」
と強い口調で言ってしまった彩の顔を、由理佳は少し見ていたが
「そうだよね。いくら好きになられても、無理なものは無理だもんね。」
そう言って、笑い掛けてくる。
(あなたとこの手の話題するのは、結構キツイんですけど。)
思わずつぶやいてしまった心の中の言葉を、彩はもちろん口に出せるはずはなかった。