Far away ~いつまでも、君を・・・~
「人を好きになるって、別に一目惚ればかりじゃないと思うし。最初は関心がない、それどころか、第一印象最悪とか思った相手と、結果として付き合ったり、結婚したりっていうのは、よく聞く話じゃない。」


「・・・。」


「口説かれ続けて、気が付けば落ちちゃってたって、特に女子の方には、あるあるのような気がする。」


「エ〜、そんなの本物じゃないよ。」


遥の言葉に、彩は首を振った。


「私はそんなのには流されないよ、絶対に。」


彩はそう言い切った。


だが、遥と別れて、一人になると、彩は途端に物思いに沈んだ。


クリスマスイブに誘われ、大晦日には電話が掛かって来て、初詣に誘われたが、あっさりと断った。


それから、尚輝からのアプローチはピタリと止んだ。


さっき口にした通り、清々したと感じたのは確かだったが、その反面、戸惑っていたのも事実だった。


(どうしたの?尚輝。)


そんな思いを抱いてしまったことを、遥にしっかり見破られていた。


それが恥ずかしくて、そんなものには絶対流されないと、強がっては見せたが、自分の気持ちが揺れていることに、彩は気付いている。


(私だって、本当は、あれだけ好きだって言ってもらえて、嬉しくないはずがない。尚輝のこと、嫌いじゃないよ。)


最初は戸惑いもあったし、チャラい奴だという嫌悪感もあった。それに年下はなぁ・・・という思いもあった。


だが、部活を通じて付き合ってみると、最初はいい加減に向き合っていた弓道にも、熱心に取り組んでいるし、自分に対する気持ちもいい加減なものではないことも、今ではわかっている。


ひょっとしたら、尚輝に対する自分の気持ちは、もう「嫌いじゃない」なんて段階じゃないのかもしれない。


だからこそ、急にアプローチして来なくなった尚輝に戸惑いと寂しさを感じてしまっているのかもしれないことは、自分でも認めるしかなかった。


だったら、いっそのこと・・・とまで、彩は思い切れない。叶わぬ思いとわかっているのに、斗真への気持ちが、振り切れないままなのだ。


(私も諦めが悪いよな。でも私が、この思いを振り切れず、尚輝が私の心の中から、斗真先輩を完全に追い出せない以上、アイツが私を諦めたことは正解なんだよ、きっと。)


そう結論付けた彩は、フッとため息をついていた。
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