Far away ~いつまでも、君を・・・~

3学期が過ぎて行くのは、あっと言う間。受験があって、学年末試験があって、ホワイトデ-があって、そして卒業式・・・。


「先輩、ご卒業おめでとうございます。」


今、弓道場では、式典を終え、教室で級友に最後の別れを告げた卒業生たちを迎え、部としての送別式が行われている。


在校生を代表して、そう祝辞を述べた彩に


「後輩のみなさんにも大変お世話になりました、私たちは今日、颯天高校を、そしてこの弓道部を卒業します。3年間、みなさんからは、たくさんの楽しい思い出をもらいました、感謝しています。みなさんは児玉先生の指導の下、廣瀬主将を先頭に、これからも精一杯弓道に取り組んで下さい。そんなみなさんを、私たちは、OB、OGとして、応援させてもらいます。本当にありがとうございました。」


卒業生を代表して、由理佳が謝意を述べた。このあとは用意されたソフトドリンクで乾杯、そして名残を惜しむように歓談、更には記念撮影会が賑やかに行われた。


「彩。」


そんな最中、由理佳が声を掛けて来た。


「今日はありがとうね。」


「いえ、由理佳さん、ご卒業おめでとうございます。」


その彩の言葉に、由理佳はニコリと微笑む。その笑顔は、同じ女子から見ても、可愛くそして素敵だった。


「寂しくなります。」


「私もだよ。年明けてからは、ほとんど登校する機会がなかったから、そうでもないと思ってんだけど、いざこうやって卒業式が終わって、明日からもう本当にこの学校に来なくなるんだと思ったら、やっぱり寂しいね。」


と言った由理佳は


「ここにも・・・もう高校生として、足を踏み入れることはないんだなぁって。実際にはそんなことないはずなんだけど、家よりも、教室よりも長い時間、ここで過ごしたような気がするから。」


としみじみと続ける。


「その気持ち、わかります。」


そう彩が答えると、2人は顔を見合わせて笑う。


「4月からは・・・斗真先輩と同じ大学ですね。」


「うん・・・やっとまた彼と一緒に居られる。卒業は寂しいけど、それは楽しみかな。」


嬉しそうに言う由理佳を見る、彩の気持ちは複雑だった。
< 54 / 353 >

この作品をシェア

pagetop