Far away ~いつまでも、君を・・・~
セレモニ-が終わり、卒業生たちが校門に向かうと、斗真が立っていた。


「斗真!」


真っ先に嬉しそうに駆け寄るのは、もちろん由理佳。


「お迎え、ありがとう。」


「ああ。由理佳、卒業おめでとう。」


「うん。」


その恋人たちの会話が一段落するのを待ちかねたように、卒業生たちがどっと斗真を取り囲む。


「みんな、卒業おめでとう。」


「先輩送ってから、もう1年経っちゃいました。」


「本当だ、早ぇもんだな。」


そんな交歓の輪を彩は、少し離れた所で見ていた。


「凄い人気ですね、本郷先輩。」


いつのまにか、彩の横にいた尚輝が言う。


「あの人には、斗真先輩には、女子も男子も憧れてたからね。あの人は・・・凄い人だよ。」


そうつぶやくように言った彩の横顔を、尚輝は思わず見つめる。しばらく続いたその輪が解け


「じゃぁね、彩。遥もマッチも二階もあとは頼んだよ。」


そう晴れやかな顔で、後輩たちに別れを告げた由理佳は、憚ることなく、斗真に寄り添い、その横で、サッと彩たちに手を挙げた斗真は、これまたためらうことなく、由理佳を抱き寄せ、歩き出す。


「確かに・・・カッコよすぎますよね、あの人。」


感心半分、呆れ半分と言った口調で尚輝は言う。


「なんとか弓道だけでも、あの人超えらんねぇかと思ってるんだけど、なかなかな・・・。」


そうつぶやく町田に


「諦めないで超えようよ。私たちには、まだそのチャンスがある。」


彩が力強く言った。


「そうだね。本郷さんも由理佳さんも、超えて見せようよ。」


その言葉に、遥が力強く応え


「俺も・・・頑張ります。」


尚輝もやや遠慮がちに続く。


「さ、じゃぁ、練習だ。」


そうみんなに声を掛けて、校内に引き返す彩。


(終わったんだな、私の恋は・・・。)


仲睦まじく、寄り添う由理佳と斗真の姿を思い出しながら、彩の心にそんな思いが浮かぶ。斗真本人を送った去年ではなく、今更そんな思いがこみ上げて来たことが、彩は自分でも不思議だった。
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