Far away ~いつまでも、君を・・・~
京香のポスタ-が功を奏したばかりではないだろうが、この年の弓道部の新入部員は20名を超えた。


「こんなに大人数なのは、いつ以来だ?」


そう言って、児玉は上機嫌だったし


「自分たちの練習も大切だけど、この子たちの面倒をちゃんと見るのも、私たちの大切な役割だよ。」


と彩は、副将2人と話していた。そして


「それにしても凄いな、豊作、豊作。」


その日の練習が終わったあとの男子更衣室。着換えながら木下が楽しそうに口を開いた。


「全くだ。俺らにもいよいよ春到来かもな。」


と応じた鮫島も嬉しそうだ。


「何を言ってるんだ?お前たち。」


浮かれた様子の2人に、首をひねりながら、尚輝が尋ねると


「あの粒揃いの1年女子を見て、テンション上げるなって方が無理ってもんだ。」


「そうそう。」


ニヤニヤ顔で、2人は答える。


「なるほど、そういうことね。」


納得顔で、頷いた後


「でも今年は、何であんなに新入部員が多いんだろう?」


不思議そうに尚輝は言う。


「お前、本当にわかんないの?」


「倫生はわかるのかよ。」


「ああ。」


「じゃ、なんで?」


「そんなの『彩効果』に決まってんじゃねぇか?」


「はぁ?」


「お前、本当に主将に惚れてるの?あの部活勧誘オリエンテーションの時の主将の実演姿に、男も女もみんなハートを打ち抜かれちゃったの。」


訳が分からんと言わんばかりの尚輝に、木下は言ってのける。


「そうそう。あの時は俺もスタッフとして見てたけど、正直KOされたぜ。」


と鮫島も相槌を打つように続ける。


「俺、オリエンテ-ション参加してねぇし・・・。」


そう言って口を尖らせる尚輝に


「彩フリ-クのお前が見てたら、卒倒して倒れてるぜ。とにかくカッコよくて、凛々しくて。その上、女子としてスペックの高さに、県大会の上位に入れるほどの選手としての実績が加われば、もはや無敵でしょう。」


と滔々と鮫島は続ける。


「尚輝には悪いけど、俺はあの時確信したよ。こりゃ、お前じゃ役不足だ、主将が全く相手にしないのも無理はないって。」


「なっ・・・。」


「淳の言う通り。お前もいい加減に目を覚まして、他の子に目を向けろよ。主将には及びもつかなくても、ホントに可愛い子多いぜ。」


言葉を失う尚輝に、鮫島と木下は容赦ない言葉を浴びせかけていた。
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