Far away ~いつまでも、君を・・・~
試合が始まった。まずは女子団体予選。高校名を呼ばれ、的の前に立った彩以下、5名の選手。


「始め。」


審判の声で、横の遥と頷き合った彩は、ゆっくりと所作に入る。


(落ち着け。落ち着けば、絶対に大丈夫。)


自分にそう言い聞かせ、彩は第一矢を射る。放たれた矢は、真っすぐに的を目がけて飛んで行き、見事に的中する。昨年とはやはり違う。的中を告げる声が、会場に響き、彩はそのまま待機の姿勢をとる。


(遥・・・。)


続いて遥が所作に入る。そして彼女も落ち着いた様子で、第一矢を的中させる。


(いける、頼んだよ、みんな。)


彩は他の選手に、そう呼び掛ける。


結果、40射21中の成績で、堂々と予選突破。入賞である6位以内はおろか、インハイ出場も夢ではない結果で、観覧席をみると、児玉と男子チ-ムが声こそ出してないが、大はしゃぎしている。


(やったね、先輩!)


そんな言葉を送りながら、ガッツポ-ズをしていた尚輝に、その声が届いたかのように、彩が笑顔を返してきた・・・ように尚輝には見えた。


(ヤベッ、結構いい感じかも、俺たち。)


なんて舞い上がりかけて


(いやいや、あくまで俺の結果次第だから。)


と気を引き締める。


予選通過チ-ムは更に全員がもう1射、これは最終順位に当然反映される。


(これは外すわけにはいかない。)


凛とした佇まいで、再び的の前に立った彩は、見事な集中力で、それを射抜いて見せる。これで7中、この成績なら、個人戦の優勝も十分狙える結果だった。


(もう彩は、私なんかの手には、とても届かないところにいる・・・。)


深々と一礼して、退場する親友の姿の凛々しさに、遥は息を呑む思いだった。


結果、颯天高女子は4位入賞。創部以来、最高成績を収めた。予選成績は5位の高校と同数だったが、決勝での彩の1中が、決め手になっての4位だった。


「よくやった。本当によくやった。」


普段は感情をあまり表さない児玉が、そう言って選手1人1人に握手を求め


「やったな。」


町田も感動を隠さずに、声を掛けて来る。


「ありがとう、次はマチヒロ達の番だよ。」


そう笑顔で言った彩は、次に尚輝に目を向けると


「あんたもしっかりね。」


と言った。


「任せて下さい!」


勢い込んで答えると


「肩に力入り過ぎ。」


と彩に、ポンと背中を叩かれて、尚輝は思わずむせ返っていた。
< 64 / 353 >

この作品をシェア

pagetop