Far away ~いつまでも、君を・・・~
男子団体は16中で、こちらも見事予選突破。男女共に予選を通ったのは、やはり創部以来、初のことだった。
そして、翌日は個人戦。女子は彩と遥、男子は町田と尚輝が出場する。こちらは団体戦同様、1人8射を行い、5中以上で予選通過。予選通過者は更に1射を行い、その合計で順位を決める。
先陣を切って、的の前に立ったのは彩。1つ深呼吸したあと、じっと前方を見据えた彩は、キリキリと弓を引き絞り、そして射った。ヒュンと言う音と共に、放たれた矢が、28m先の的に見事命中するまでに、時間は掛からなかった。
1射、また1射・・・彩は弓を引いて行く。今、彩は周りに誰の気配も感じず、何の音も聞こえて来なかった。まるで山奥で1人、黙々と弓を引いているような錯覚を覚えていた。そんな彼女の立ち振る舞いの美しさ、凛々しさは、見ている人々の心を打ち、目をくぎ付けにしていた。
そしていよいよ、最後の1射を迎え、彩はハッと我に返った。
(これで、最後・・・。)
さすがにこみ上げて来るものがあり、彩はフッと1つを吐いた。そして気を取り直したように、再び弓を構えると、万感の思いを込めて、手を離した。放たれた矢が、まるでスロ-モ-ションのように的に吸い込まれて行くのを見届けた彩は、微かに笑みをこぼした。
「颯天高、廣瀬彩。6中。」
審判の声が耳に入る。既に彩の記録を上回る選手が複数いる。彩の高校弓道部での戦いは、ここで幕を下ろした。大きく一礼して、退場しようと後ろを振り返った彩の目に、児玉を始めとした仲間、後輩達が、大きな拍手を送っている姿が飛び込んで来た。
(3年間、よく頑張ったね、彩。)
自分をそう労った彩は、次にとびっきりの笑顔で、仲間達に手を振った。もうやり残したことはない、心から彩はそう思えた。
仲間達の顔が大きくなって来る。その中に、じっとこちらに視線を送って来る尚輝に気付いた時、彩の心の中に、何か熱い思いがこみ上げて来た。
(尚輝、ありがとう・・・。後はあんた次第だから。)
そう心の中で、つぶやいた彩は、次の瞬間、ハッとした。仲間達から少し離れた場所から、1人、自分に拍手を贈ってくれている1つの人影・・・。
(斗真先輩・・・。)
次の瞬間、視線を落とした彩は、足早に会場を出た。
そして、翌日は個人戦。女子は彩と遥、男子は町田と尚輝が出場する。こちらは団体戦同様、1人8射を行い、5中以上で予選通過。予選通過者は更に1射を行い、その合計で順位を決める。
先陣を切って、的の前に立ったのは彩。1つ深呼吸したあと、じっと前方を見据えた彩は、キリキリと弓を引き絞り、そして射った。ヒュンと言う音と共に、放たれた矢が、28m先の的に見事命中するまでに、時間は掛からなかった。
1射、また1射・・・彩は弓を引いて行く。今、彩は周りに誰の気配も感じず、何の音も聞こえて来なかった。まるで山奥で1人、黙々と弓を引いているような錯覚を覚えていた。そんな彼女の立ち振る舞いの美しさ、凛々しさは、見ている人々の心を打ち、目をくぎ付けにしていた。
そしていよいよ、最後の1射を迎え、彩はハッと我に返った。
(これで、最後・・・。)
さすがにこみ上げて来るものがあり、彩はフッと1つを吐いた。そして気を取り直したように、再び弓を構えると、万感の思いを込めて、手を離した。放たれた矢が、まるでスロ-モ-ションのように的に吸い込まれて行くのを見届けた彩は、微かに笑みをこぼした。
「颯天高、廣瀬彩。6中。」
審判の声が耳に入る。既に彩の記録を上回る選手が複数いる。彩の高校弓道部での戦いは、ここで幕を下ろした。大きく一礼して、退場しようと後ろを振り返った彩の目に、児玉を始めとした仲間、後輩達が、大きな拍手を送っている姿が飛び込んで来た。
(3年間、よく頑張ったね、彩。)
自分をそう労った彩は、次にとびっきりの笑顔で、仲間達に手を振った。もうやり残したことはない、心から彩はそう思えた。
仲間達の顔が大きくなって来る。その中に、じっとこちらに視線を送って来る尚輝に気付いた時、彩の心の中に、何か熱い思いがこみ上げて来た。
(尚輝、ありがとう・・・。後はあんた次第だから。)
そう心の中で、つぶやいた彩は、次の瞬間、ハッとした。仲間達から少し離れた場所から、1人、自分に拍手を贈ってくれている1つの人影・・・。
(斗真先輩・・・。)
次の瞬間、視線を落とした彩は、足早に会場を出た。