Far away ~いつまでも、君を・・・~
児玉や仲間たちに、挨拶をしたあと、彩は斗真に近付いた。


「廣瀬、お疲れさん。」


笑顔でそう言った斗真に


「ありがとうございます。」


彩は頭を下げた。


「あの、由理佳さんは?」


「なんか用事があるらしい。みんなによろしくと言っていた。」


「そうですか。」


由理佳が来てないことに、なぜかホッとした思いを抱く彩。


「間に合ってよかったよ。」


「えっ?」


「お前の高校最後の試合、どうしても見たかったんでな。」


「ありがとうございます。」


「それにしても、いい選手になった。俺の目に狂いはなかった。」


「先輩・・・。」


「前に、俺が一緒にやった女子の中では、お前が1番だって言ったことあったよな。」


「はい。」


「あれは実は嘘だ。」


「えっ?」


「本当は女子だけじゃない、一緒にやった選手の中で、廣瀬がナンバー1だと思ってる。もちろん自分自身と比べてもな。」


その斗真の言葉を聞いて、息を呑んだような表情になる彩。


「お前には敵わない。そう思ったから、俺は弓道を辞めたんだ。」


「からかわないで下さい。」


ようやくその言葉を口にした彩に


「マジな話だ。」


答えた斗真の表情は真剣だった。


「お前なら、俺が立てなかった、もっと大きな、高い舞台に立って、戦うことが出来る。俺は、そんなお前を応援していけばいい。そうすれば、廣瀬がきっと、その見果てぬ夢の舞台に連れて行ってくれる。俺の確信は、間違いじゃなかった。」


「・・・。」


そんな2人の前では、遥が弓を引いている。親友の最後の試合を応援しなければならないのに、今の彩はそれどころではなかった。


「大学でも、弓道続けるんだろ?」


そう聞かれて


「まだ、決めてません。」


彩は正直に答える。


「絶対に続けて欲しい。続けるべきだよ、廣瀬。」


「先輩・・・。」


「なんと言っても、お前は、弓を引いている時が一番魅力的だぜ。」


その言葉に彩が、凝然としている間に、遥は3中で競技を終え、予選通過はならなかった。一礼して、こちらに戻って来る遥に手を振る彩。それに気付いて、手を振り返そうとして、横にいる斗真に気付いた遥は、一瞬ビックリしたような表情になったが、すぐに笑顔になる。


「香田もよく頑張ったな。」


「はい。」


「じゃ、俺はそろそろ失礼するか。」


「えっ、マチヒロの試合は見ていかないんですか?」


「そうしたいのはヤマヤマだが、俺も結構忙しいんだ。町田とあとお前のファンクラブ代表の応援は、自分でしっかりやってくれ。じゃあな。」


そう言って、こちらをずっと気にして見ている尚輝に、チラリと視線を送ると、ニヤリと笑って、斗真は去って行った。
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