Far away ~いつまでも、君を・・・~
女子の部が終わり、男子の部が始まった。順番が近付き、尚輝と町田が呼び出しを待っていると


「町田くん。」


遥が呼びかけて来た。


「私たち3年生にとって、これが最後の試合だよ。」


「大トリか。」


そう言って、町田は笑う。


「頑張ってね。」


「ありがとう。」


言葉を交わして、見つめ合う2人。


「次の選手、入場して下さい。」


そこへ呼び出しの声が掛かる。


「行って来る。」


「うん、二階くんもしっかりね。」


「ありがとうございます。」


そして、遥に見送られる形で、2人は会場に向かう。


「いいもんだな。」


「えっ?」


「女子にああやって、励まされて、見送ってもらうって。男冥利につきるってもんだ。」


一瞬笑みを浮かべた町田は


「さ、行くぜ。」


と言うと、すぐに表情を引き締めた。


試合が始まった。まず射場に立った町田は、3年間の集大成だと、懸命に弓を引いたが4中に終わり、予選通過にあと1中及ばずに終わった。最後の1射を外し、予選落ちが決まった後、町田はなんとも言えない表情で、観客席の彩たちを振り仰いだ。


「惜しかった・・・でもよく頑張ったよ、町田くん。」


目に涙を浮かべて、そうつぶやいた遥の横で


「マチヒロ、お疲れ。」


彩も心からの言葉を贈っていた。


「先輩、お疲れ様でした。」


そして、下がって来た町田に、尚輝も労いの言葉を掛ける。


「やっぱり、邪な心を持っちゃ、ダメだな。」


「えっ?」


「最後くらい、好きな女に、いいとこ見せてぇなんて、柄にもないこと考えたのが、よくなかったな。」


そう言って、苦笑いする町田。


「お前も気を付けろ、余計な力入って、いいことないぜ。」


「先輩・・・。」


尚輝が思わず言葉を失っていると


「ま、頑張れ。」


そう言って、尚輝の肩をポンと1つ叩くと、町田は退場して行った。
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