Far away ~いつまでも、君を・・・~
部活が終わり、尚輝が花壇に向かうと、彩は咲き乱れているアジサイを前に、既に待っていた。


「お待たせしました。」


そう言って、頭を下げた尚輝に


「ううん、私の方こそごめん。本当は私の顔なんか、今更見たくなかったでしょ?」


彩は表情を固くしながら言う。


「そんなことないっす。全然心が痛まないなんて言うと、嘘になりますけど・・・でも嫌なんてことはありません。むしろ、結構嬉しかったりします。」


そう言って笑った尚輝は、すぐにその笑顔を納めて、彩と向き合う。


「ずっと決めてたんです。」


「えっ?」


「彩先輩が弓道部を引退するまでに振り向いてもらえなかったら、諦めようって。」


「尚輝・・・。」


「自分でも無茶言ったと思いますよ。身の程を知れって話ですよね。」


「・・・。」


「でも嬉しかったです。たぶん、何寝言言ってんのって、あしらわれるだけだと思ってたから。彩先輩がやっとチャンスをくれたんだって。素直に嬉しかった。」


「・・・。」


「先輩だって、出来るわけないと思ったからこそ、最後にお情けでOKしてくれただけだってこともわかってた。でも、嬉しかったです。よし、やるだけやってやろうって気合入れて行きました。もし奇跡が起これば、先輩は約束を反故にする人じゃないって、わかってたから。」


その尚輝の言葉を聞いて、彩の表情は微かに歪む。


「そしたら、いきなり5連続的中でしょ?調子こいて、続けて射ったら、外して、それでハッと我に返って・・・あと2射だって思ったら、急にプレッシャ-が掛かって来て。おいおい、出来るなんて自分でも思ってなかったじゃねぇか。これは先輩を諦める為の、自分の気持ちにケジメを付ける為のセレモニ-、最初っからそのつもりだったじゃねぇか。だから力抜けって、自分で自分に一所懸命に言い聞かせたんですけど・・・ダメでした。情けねぇ!」


天を仰いだ尚輝。その彼の姿に、彩は思わず俯いてしまっていた。
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