Far away ~いつまでも、君を・・・~

尚輝に主将を引き継ぎ、彩が同級生たちと共に、弓道部を引退したのは、それから数日後のことだった。


「確かにこれで引退するけど、いきなり弓を全然持たなくなったら、ストレスで倒れそうだから、たまに顔出すよ。いいよね?」


「もちろん大歓迎です、いつでもお待ちしています。」


弓道場では見慣れない制服姿の彩の言葉に、尚輝は答える。


「本当は彩は引退なんかしたくないんだもんね。」


「全くだよ。けど、こればかりは仕方がないことだから。でもさ。」


遥に冷やかされて、しんみりとした表情になった彩は、すぐに気を取り直すように言った。


「私は、大学に進んでも、弓道は続ける。そう決めたから。」


「そうですか、それはよかったです。」


それを聞いて、尚輝が顔をほころばせた。


「だから、その為にも勉強頑張んなきゃ。」


自分に言い聞かせるような彩の言葉に


「そうだ、憧れのキャンパスライフが俺たちを待ってるんだから。」


「うん。」


横にいた遥と町田も頷く。


「頑張ってください、陰ながら応援しています。」


「ありがとう。でもさ、あんたも頑張るんだよ。あんな可愛くて、素敵な彼女が出来たんだから。」


「い、いや、それはその・・・はい。」


他ならぬ彩にツッコまれて、しどろもどろになる尚輝を見て、3年生たちは笑い声を上げる。


「さぁ、そろそろ行こう。後輩たちの練習の邪魔になるだけだから。」


彩の言葉に、遥たちが頷き


「じゃぁ、後はよろしく。」


町田が少しおどけたように、手をヒラヒラとさせながら、別れの言葉を述べる。


「お疲れ様でした!」


それに応えて、尚輝以下の1、2年生が一斉に声を出して、先輩たちに一礼し、3年生たちは礼を返して、弓道場を後にする。


「終わったね。彩、主将、本当にお疲れ様でした。」


「ありがとう。遥とマチヒロに助けてもらって、なんとか大過なく務められたかな・・・自信ないけど。」


「なに言ってんだよ。主将は交代したけど、これからも廣瀬は、俺たちの代のリーダ-だ。ずっとお前に付いてくよ。」


「からかうな。」


「本気だよ。な、みんな。」


町田の言葉に、みんなが頷くのを見て


「みんな、ありがとう・・・。」


彩は感極まったような表情になる。涙があふれそうになるのを、隠すように、彩は弓道場を振り仰いだ。


「寂しいね、引退って、やっぱり。」


「彩・・・。」


「でも、3年間、悔いなし、だよね。」


彩が精一杯の笑顔でそう言うと、遥たちはまた、大きく頷いた。
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