Far away ~いつまでも、君を・・・~
「なにかと口うるさい奴だが、悪い奴じゃないし、まぁ冷静に見れば、ビジュアルも決して悪くないと思うぜ、アイツ。だから、よかったら前向きに検討してやってくれよ。」


「でも、いいのかよ?」


「えっ?」


「だって、お前たち、幼なじみだろ?だったら・・・。」


そう言って、伺うように自分を見る尚輝に、きょとんとした表情を浮かべた秀はやがて


「お前、なんか勘違いしてるな。」


と言って笑いだした。


「あのなぁお前、漫画の見過ぎ。幼なじみ同士が想い合ってて・・・なんて普通ないから。」


「そ、そうなのか?」


「確かにアイツとは腐れ縁だし、たぶん一生の付き合いになるとは思うが、アイツに恋愛感情なんて、全然ないから。あんな口うるさいお節介焼きとずっと一緒にいるなんて、俺は絶対に無理。もちろん、アイツの方も冗談じゃないって、きっと怒るぜ。」


「秀・・・。」


「だから、俺のことを気にする必要なんか、本当に全然ないからな。単純にお前が京香を好きになれるかどうか、それだけを考えてくれ。ま、たまのお節介返しで、出来たら前向きにご検討をって、俺からも、もう1度お願いしとくよ。」


あっけらかんとそう言って、秀は尚輝の肩を、ポンと叩いた。


尚輝が、京香を校舎の屋上に誘ったのは、その次の日の放課後だった。


「部活行かなきゃなんないのに、ごめんな。」


「ううん、二階くんの方こそ忙しいのに、ありがとう。」


そう言いながら向かい合った2人だが、すぐに気恥ずかしくなって、視線を逸らしてしまう。


「あの、さ。」


「うん。」


「こないだの、話なんだけど・・・。」


「うん・・・。」


一瞬訪れた沈黙の後、京香に視線を向けた尚輝。


「是非・・・お願いします。」


「えっ?」


「俺も菅野のこと、好きだよ。だから・・・俺と付き合って欲しいです。」


「二階くん・・・。」


その尚輝の言葉に、目を見開いて、彼を見る京香。


「いいの・・・?」


信じられないという表情の京香。


「菅野の気持ち、正直嬉しかった。それに・・・好きな人に待たされる辛さは、よくわかってるから。だから・・・。」


「尚輝!」


尚輝の言葉が終わらないうちに、京香が飛び付くように、尚輝に身を寄せる。


「ありがとう、尚輝。」


「これからよろしくな、京香。」


そう答えた尚輝は、京香をぎゅっと抱きしめた。
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