Far away ~いつまでも、君を・・・~
ここにはいろいろな思い出がある。
花壇に着くと尚輝は、少し物思いに耽るように、美しく咲いた花々を眺めていたが、やがてジョウロを手にすると、花に水やりを始めた。
「二階先生。」
そこへ後ろから呼びかける声がする。尚輝には、振り返るまでもなくその声の主がわかる。
「きょ・・・いや、菅野先生。」
一瞬、普段のクセで、口から出かかった呼び名を飲み込んで、慌てて「今呼ぶべき名前」で呼び返す。
「お疲れ様でした。」
そう言いながら、笑顔で近付いて来たのは菅野京香。今春から着任した美術担当教師であり、尚輝にとっては、かつてのクラスメイトであり、そしてなにより、高校在校当時から付き合っている大切な恋人である。
「やっぱりここだったんだ。」
「昼間忙しくてさ。水やり当番だったのをすっかり忘れてたんだよ。」
横に並んで来た京香に、苦笑いをしながら、しかし花に水をやる尚輝の手は止まらなかった。
高校を卒業後、地元の大学に進学した尚輝と、都会の美大に進んだ京香。言ってみれば遠距離恋愛になってしまった2人は、しかしそれを乗り越え、その絆を深めて行った。
そして、大学卒業。採用試験に見事合格した尚輝が、目標を叶えて、母校に着任したのに対し、京香は
「4年間、授業や課題に振り回されて、まだ自分の作品にちゃんと取り組めてない。」
と言って、大学院に進学。院で学ぶ傍ら、大学近くの高校で非常勤の講師も務め出し
(ひょっとしたら、こっちに帰って来ないつもりか?)
尚輝は内心焦っていたが、卒業と同時に帰郷。自分と同じく、母校に就職を決めたのだ。
「驚いたでしょ?」
「驚いたなんてもんじゃない。そのつもりなら、最初から言っといてくれよ。」
「えへへ。サプライズ成功。」
文句を言う尚輝に、京香はいたずらっぽく笑ったものだ。
こうして、2人はこの4月から正式に同僚になった。
花壇に着くと尚輝は、少し物思いに耽るように、美しく咲いた花々を眺めていたが、やがてジョウロを手にすると、花に水やりを始めた。
「二階先生。」
そこへ後ろから呼びかける声がする。尚輝には、振り返るまでもなくその声の主がわかる。
「きょ・・・いや、菅野先生。」
一瞬、普段のクセで、口から出かかった呼び名を飲み込んで、慌てて「今呼ぶべき名前」で呼び返す。
「お疲れ様でした。」
そう言いながら、笑顔で近付いて来たのは菅野京香。今春から着任した美術担当教師であり、尚輝にとっては、かつてのクラスメイトであり、そしてなにより、高校在校当時から付き合っている大切な恋人である。
「やっぱりここだったんだ。」
「昼間忙しくてさ。水やり当番だったのをすっかり忘れてたんだよ。」
横に並んで来た京香に、苦笑いをしながら、しかし花に水をやる尚輝の手は止まらなかった。
高校を卒業後、地元の大学に進学した尚輝と、都会の美大に進んだ京香。言ってみれば遠距離恋愛になってしまった2人は、しかしそれを乗り越え、その絆を深めて行った。
そして、大学卒業。採用試験に見事合格した尚輝が、目標を叶えて、母校に着任したのに対し、京香は
「4年間、授業や課題に振り回されて、まだ自分の作品にちゃんと取り組めてない。」
と言って、大学院に進学。院で学ぶ傍ら、大学近くの高校で非常勤の講師も務め出し
(ひょっとしたら、こっちに帰って来ないつもりか?)
尚輝は内心焦っていたが、卒業と同時に帰郷。自分と同じく、母校に就職を決めたのだ。
「驚いたでしょ?」
「驚いたなんてもんじゃない。そのつもりなら、最初から言っといてくれよ。」
「えへへ。サプライズ成功。」
文句を言う尚輝に、京香はいたずらっぽく笑ったものだ。
こうして、2人はこの4月から正式に同僚になった。