Far away ~いつまでも、君を・・・~
それから、あっと言う間に2年が過ぎた。


ウェディングプランナーの週末は、大袈裟ではなく、戦争だ。挙式が、人々の多くが休日となる土日祝日に、集中するのは、自明の理。「ベイサイドシティ」の名が示す通り、海のほとりに建つ人気ホテルの挙式は、10:00、11:30、14:30、17:30スタ-トの4枠が設けられている。


この日、11:30からの枠を担当する彩。新郎新婦は式の2時間半前には会場入りするので、遅くとも8時には出勤する。


そして緊張の面持ちの新郎新婦を、笑顔で出迎えてから、その日の業務がスタ-トする。式当日のプランナ-の任務は、介添え役として、新郎新婦を一番近くでサポ-トすることだが、実はそれに全精力を傾けていればいいわけではない。


式の進行状況に、常に気を配り、各スタッフに適宜指示を出し、プランニング通りに事を運ぶための「司令塔」でもある。プランナ-が判断を誤れば、式が崩壊しかねない。


とにかく、おめでたい席であり、滞りなく式を終了させられて当たり前。なにかトラブルがあれば、大問題に発展することもある。11:30に式がスタ-トし、披露宴の終了が15:00。そのあと、招待客(ゲスト)を見送り、着替えを終えた新郎新婦を見送るまで、約1時間。それまで一瞬たりとも気を抜くことは出来ない。


全てが終わり、ホッと一息つく間もなく、その後、式を控えた別のカップルとの打ち合わせが待っていることもしばしば。こういった打ち合わせも、結局は土日祝日に多くが集中することになるのだから、避けられない現実なのだ。


それが終わった後に、終了した式の反省会。その内容を記録に残し、更に夕方の打ち合わせ記録も当然残す。そうこうしているうちに、定時の時刻など、とうに過ぎ、気が付けば20時、21時になっているなんていうのは、珍しい話でもなんでもないのだ。


翌日の休日にリフレッシュの為に、大好きな弓を引きに行きたくなるのも、無理からぬ話。でも・・・


(結局、明日もグダグダしてるうちに1日が終わっちゃうんだろうな、きっと。)


なんて考えてしまい、思わず苦笑いが浮かんでくる。


(とりあえず、帰ろ。)


そう思いながら、彩は席を立った。
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