Far away ~いつまでも、君を・・・~
翌朝、目覚めた彩が、時計に目をやると、既に11時を優に過ぎているのが、目に入った。


(また、やっちゃった・・・。)


20代半ばの女子が、こんなことじゃいけないと思いながらも、仕事の疲れがたまっている土日明けの休日は、起きるとほぼ午前中が終わってしまっている。それから、ノロノロとブランチを摂り、洗濯、掃除と溜まりがちの家事をこなしていると、あっという間に夕方に。


そこから出掛けようとしても、明日の仕事のことを考えると、つい億劫になって、結局せいぜい近くのスーパ-に買い出しに出るのが関の山。


(華やかなイメ-ジに包まれた、ウェディングプランナ-さんの私生活の実態は、こんなものでございます・・・。)


そう自嘲しながら、1人夕飯の準備をする。こんな感じで休日は過ぎて行ってしまう。


大学時代、彩は女子専用の学生向けマンションで暮らしていた。都会での、娘の1人暮らしを案ずる親から、絶対条件とされたからだが、彩も特に抵抗もなく、それを受け入れて、4年間を過ごした。


ただ卒業後は、当然そこに住み続けることが出来ない為、引越しをせざるを得なかった。新居を探すに当たって、彩が重視したのは、まずは通勤の利便さともう1つは


(出来たら、近くに弓道場があればいいな。)


というあまり普通の人が考慮しない条件だった。結局、2駅離れた場所に道場がある、手頃な物件に出会えたのは幸いだった。


その道場は、地元の弓道団体が、夜間や土日になると使用するが、平日昼間はフリ-で練習をすることが出来る。


ホテリエである彩は休日が交代制で不規則。特にウェディングプランナ-になってからは、土日祝日の休みは、ほぼ望めない環境になってしまったが、今更指導者に付いて練習とか、団体に所属して試合に、などということを望んでいない彼女にとって、その環境は好都合で、入社して、しばらくは休日になると、その道場でよく汗を流した。


ただその時間に来場する人は、やはり主婦や老人が多く、弓道と言う共通項で、その場では会話を交わしても、交友が広がるというまでには至らなかった。


そのうちに、仕事が忙しくなって、道場からは足が遠のき、遊びに行こうにも、平日休みでは友たちとも時間が合わなくなり、結局、出掛けるのも1人なんてことが多くなってしまう。そんなこんなの状況が重なったことが、彩をいよいよ出不精にしてしまっていた。
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