Far away ~いつまでも、君を・・・~
そのあとも、いろいろな話に花が咲き、気が付けば、あっと言う間に時間が過ぎていた。


「明日も仕事なのに、ごめん。遥と話してると、時間を忘れちゃうよ。」


「ううん、私も同じだから。」


そんなことを言い合いながら、席を立とうとした彩に


「彩。」


と遥が呼び掛ける。


「うん?」


答えた彩に、少し躊躇った様子を見せた遥だったが


「今度さ、彩のホテル、見学に行ってもいいかな?」


と少し照れ臭そうに尋ねて来た。一瞬、虚をつかれた感じで固まった彩だが、すぐに


「えっ、それってつまりそういうこと?」


と問い返して、浮かせかけた腰を下ろす。


「う、うん・・・。」


小さく頷く遥。


「そっか、とうとう決めたんだぁ。おめでとう。」


彩が満面の笑みで、祝福すると


「ありがとう。実は浩人に転勤の話が出てるんだ。転勤がいずれあるのは、わかってたから、私もその時は付いて行こうって、前から決めてたから。それで、いいきっかけだからっていうのもあって。」


遥は恥ずかしそうに答える。かつての弓道部の仲間で、遥の恋人である町田は、やはりこちらで就職して、不動産会社に勤めている。


「それにしても、相変わらず水臭いな。そういう大切なことは最初に言ってよ。」


「ごめん、でも、まだ不確定要素があってさ。」


「不確定要素?」


おめでたい話に似つかわしくない言葉が、遥の口から出て、彩は問い返す。


「転勤があるのは間違いないんだけど、今言われてるのは、西の方っていうだけで、エリアも決定してないし、異動時期もはっきりしなくて。」


「マチヒロの会社は全国規模だから、仕方ないのかもしれないけど、でも随分曖昧な内示なんだね。それじゃ、困っちゃうよね。」


彩は難しい顔になる。


「それともう1つ。」


「えっ、まだなにかあるの?」


「これは浩人のご両親の意向なんだけど、式は地元で挙げて欲しいって。」


と言った遥の顔も難しい表情になっていた。
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