Far away ~いつまでも、君を・・・~
彩が熱心に館内の案内、更にはお勧めのプランと見積もりを2人に説明してるいちに、気が付けば4時間ほどが過ぎていた。


「どうかな?なにか質問とかあれば。」


「ううん、聞きたいことは、ちゃんと彩が全部説明してくれたから。ね、浩人。」


「ああ。廣瀬、いろいろありがとうな。」


「とんでもない。こちらこそ、今日はご来館ありがとうございました。」


3人は笑顔を交わし合った。


「これから他の式場も見るだろうから、1つの物差しにしてもらえると嬉しいかな。」


そう言った彩に


「そんなことしないよ。」


と遥は即答。


「えっ?」


「私たちの選択肢は、ここか地元の二択。それしかないよ。」


「そう、よっぽどここが気に食わないか、どこかがとんでもない激安価格でも出して来るなら別だけど、俺たちは今日、充分に納得したから。後はウチの親とよく話してみる。」


「今のままだと、たぶん浩人の転勤の方が先になっちゃうと思うけど、それでもどっちかでやるつもりだから。今日、キチンとお願いできないのは申し訳ないんだけど、自分たちの気持ちだけなら、絶対このホテルでやりたい。」


「そっか・・・そう言ってもらえると、嬉しいな。」


2人の言葉に、表情をほころばせた彩は


「ホテルベイサイドシティのウェディングプランナ-としては、もちろんこちらで是非ってお願いしたい。でも勝手なことを言わせてもらうと、私個人としても、出来たらここで挙げて欲しいんだ。」


とやや遠慮がちに切り出した。


「どうして?」


「たぶんここ以外で挙げる2人の結婚式には、私出られないから。」


「彩・・・。」


「結婚式って、みんな挙げたい曜日や時期が一緒だから・・・2人の式の日も、間違いなく私は仕事になっちゃう。今までも大学時代の友達とか、何人かから招待されたんだけど、結局無理でさ。」


そう言うと、彩は寂しそうな表情になる。


「でも2人の結婚式に出られないのは、さすがにちょっと厳しすぎる。もちろん、ここで挙げてくれても、ゲストとしては参列できないけど、でもスタッフとしてでも、2人の幸せな門出に立ち会えるなら、私は嬉しい。」


「・・・。」


「ごめんね。これは私の勝手な気持ちだから・・・聞き流して。」


「ううん、聞き流せない。」


「遥・・・。」


「そういうことなら絶対にここで挙げさせてもらう。私たちの結婚式に、彩がいてくれないなんて、私たちの方こそ耐えらんないよ。」


遥はそう言い切り、その横で、町田はウンウンと大きく頷いている。


「だから、その時はよろしくね。」


笑顔でそう言った遥に


「遥、マチヒロ・・・ありがとう。」


彩は心から、そう言っていた。
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