【電書&コミカライズ】推しとは結婚できません!〜最強魔術師様の結婚相手がわたしだなんて、めちゃくちゃ解釈違いです!〜
「それから――――よろしければこのまま、俺と踊っていただけますか?」


 エレン様はそう言って、わたしの前に跪く。わたしは大きく目を見開き、手のひらで口元を覆い隠した。


(嘘でしょう⁉ ……嘘だよね⁉ エレン様がわたしに踊ってほしいって! 踊ってほしいって! しかも、こんなふうに跪いてくださるなんて、夢? 夢かな? 夢よりすごいんですけど⁉)


 わたしはこの光景を何万回夢に見たかわからない。絵に描いて再現だってしてもらった。
 だけど、夢で見た光景よりも、神絵師に描いてもらった絵よりも、エレン様はずっとずっと美しく、スマートだった。

 差し出された手のひらも、麗しすぎる表情も、声音も、言葉も、びっくりするぐらい光り輝いていて、こらえきれずに涙がこぼれる。


「踊りましょう!」


 エレン様からの申し出を断るなんて無理。わたしにはできない。無理!
 だって、今日はわたしの誕生日だし。憧れの人と踊れるなんて最高だもの。


(いいよね。このぐらいの贅沢は許されるよね。ちょっと踊るだけだもん。別に、結婚するわけじゃないんだから)


 ほんの数分間、エレン様の時間を分けて貰うだけ。
 そもそもわたし、皇女だし。ダンスが上手かったからって理由をつけて、褒美を与えることだってできるし。お父様の覚えがめでたくなったキッカケってことにもできるし。ちゃんとメリットは用意できるもん。


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