【電書&コミカライズ】推しとは結婚できません!〜最強魔術師様の結婚相手がわたしだなんて、めちゃくちゃ解釈違いです!〜
「それでは、こちらへ」
エレン様はエスコート上手だった。本当に、一体どこで覚えたんだってぐらい、上手だった。彼にはこれまで婚約者はいなかったし、めったに夜会にも顔を出していなかったはずなのに――――なんて、馬鹿な考えを頭から必死に振り払う。
ふたりきりのダンスホールのなか、わたしたちは静かに踊りはじめた。
「――――なんだかとても、久しぶりですね」
「わたしを覚えていてくれたの? ……って、当然よね! わたし、皇女だもの」
ヴィヴィアンとして彼に会ったのはほんの数回だけ。きちんと面会をしたのは今から4年前のことだ。
たったの数回――――普通の女の子なら忘れ去られてしまうような些細なできごとでも、皇女の身分を持つわたしは違う。大好きな人にその存在を覚えていてもらえる。皇女に生まれてよかったと心から思った。
「――――相変わらず、艶やかで美しい髪ですね。アメジストの髪飾りがとても似合っています」
「ありがとう。ピンク色の髪って珍しいから、よく褒めてもらえるの。数少ないトレードマークなのよね」
侍女たちが結い上げてくれた髪に触れつつ、わたしはそっと瞳を細める。
エレン様はエスコート上手だった。本当に、一体どこで覚えたんだってぐらい、上手だった。彼にはこれまで婚約者はいなかったし、めったに夜会にも顔を出していなかったはずなのに――――なんて、馬鹿な考えを頭から必死に振り払う。
ふたりきりのダンスホールのなか、わたしたちは静かに踊りはじめた。
「――――なんだかとても、久しぶりですね」
「わたしを覚えていてくれたの? ……って、当然よね! わたし、皇女だもの」
ヴィヴィアンとして彼に会ったのはほんの数回だけ。きちんと面会をしたのは今から4年前のことだ。
たったの数回――――普通の女の子なら忘れ去られてしまうような些細なできごとでも、皇女の身分を持つわたしは違う。大好きな人にその存在を覚えていてもらえる。皇女に生まれてよかったと心から思った。
「――――相変わらず、艶やかで美しい髪ですね。アメジストの髪飾りがとても似合っています」
「ありがとう。ピンク色の髪って珍しいから、よく褒めてもらえるの。数少ないトレードマークなのよね」
侍女たちが結い上げてくれた髪に触れつつ、わたしはそっと瞳を細める。