【電書&コミカライズ】推しとは結婚できません!〜最強魔術師様の結婚相手がわたしだなんて、めちゃくちゃ解釈違いです!〜
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 モニタ越しに見る数倍、会場は混み合っているように感じられた。行き交う人々、飲み物や食べ物の売り子、いろんなことが新鮮で、緊張と興奮も相まって、心臓がドクンドクンと鳴り響く。


「リリアン、こちらに。席は確保してあります故」

「ありがとう、ジョアンナ」


 変装して会場に潜入しているので、皇女ヴィヴィアンの特等席は使えない。だけど、ヨハナはわたしのために、エレン様が見えやすい席を用意してくれていた。


(あっ、エレン様だ!)


 わたしが席についたのと同時に、エレン様が入場をなさる。凛とした立ち居振る舞い、真剣な表情。すべてが最高で麗しくて、会場の熱気も相まってわたしは昇天寸前だ。気を正常に保つため、ヨハナに定期的に背中を叩いてもらう。

 片手にはエレン様への想いを具現化した応援うちわ。藤色のリストバンドにアクセサリーを付けて、反対側は手ぬぐいを握る。これで応援の準備は万端、完璧だ。


 とそのとき、エレン様がふとこちらを見上げた。それから彼は、優しく目元を和らげ、ほんの少しだけ手を挙げる。わたしは思わず目を見開いた。


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